◆介護保険制度の概要

介護保険制度は、医療保険制度より分離され２０００年４月に開始されました。制度の持続可能性に関して幾多の課題を抱えながら、３年ごとの改定を経て現在に到っております。介護サービスを利用する場合は、介護サービスを受けたい６５歳以上の高齢者が各市町村に申請。訪問調査、コンピューターによる１次判定を経て、最終的に介護認定審査会が介護が必要かどうかを認定します。認定後にその等級に応じたサービスの利用が可能となります。

 

◆介護保険制度の課題・動向

• 受給者増加（必然的。給付額増大）に対応した給付財源の確保
  • 財政再建（年金・医療・介護の社会保障費の予算構成比約２２％、内介護は３％程度）への社会保障費増大の重圧（２０００年度→２００５年度で介護給付費は約１．９倍の６．８兆円に拡大）
  • 国の借金８３４兆円（２００６年度末、一人当たり約６５３万円）、歳出削減　・　所得格差是正含め消費税等税制の抜本改革と政策の説明責任が必要
  • 理解の得られる制度改定の推進（障害者福祉との統合、介護保険対象範囲の拡大（３９歳以下よりも保険料徴集？）、介護水準に見合った効率的で関連者に公正な介護報酬の設定）
• 保険料及び自己負担（保険対象外費目の増加）の増加基調が鮮明に
  • 低所得者及び重度介護者向けのセーフティーネットの整備（所得　・　環境に見合った補助）
  • 予防介護制度の導入（2006/04）で軽度者（要支援及び要介護１）への状態改善効果が期待されるが、利用率は低調な滑り出しに（保険者・事業者の促進努力）
  • 市区町村間での介護保険料格差（約８倍程度、格差の源泉は提供可能な介護水準の差）の拡大是正
• 介護制度運営における監視・チェック体制の整備
  • 事業者の不正請求のチェック、事業者の指定・認定のチェック、事業運営の効率化、職員の待遇の改善
  • 介護認定の公平性・質の維持・恣意的な運用のチェック（不服審査請求倍増：２００６年）
  • 施設入所条件（医療機能を必要とする介護者等受け入れ困難者）と施設環境の整備、待機待ち者・介護難民等サービス受容条件の公平性の維持、一部医療（たんの吸引等）のヘルパへの解禁等現場情報の制度反映への仕組づくり

 

◆介護保険の認定状況

○要介護認定率の推移

• 要介護認定率（認定者÷被保険者）は年代ごとに一定値に収束の傾向
  • 当初要介護認定率は増加基調にあったが、２００４年度以降横ばいに（６５歳以上：１５〜１６％）
  • 介護サービス利用者数伸び率は、被保険者数伸び率と要介護認定率増分に依存
  • 認定率安定化に伴い、６５歳以上の人口の伸び率に比例して利用者・介護給付額が伸びる構造に
• 予防介護導入（２００６年度）で要支援者急増、要介護１対応者急減
  • 従来、要支援者は、要介護１対応者の５割前後の人数構成比で、年率２割前後で伸長
  • 予防介護導入で、要支援者１０５万人（４８％増）、要介護１対応者８７万人（３６％減）と急変（2007/03）
  • 要支援と要介護１の利用限度額格差で給付額抑制に。認定者に不満が（不服審査請求倍増、要介護から要支援に４割移動）
• 要介護認定率は、被保険者の年齢に依存して増加
  • ７５歳未満の要介護認定率（要支援＋要介護）と７５歳以上の要介護認定率は、約６倍程度の格差が
  • ７５歳以上の認定者（要支援＋要介護）は、７５歳以上の被保険者（およそ７５歳以上人口）の約３０％に

 

＜　認定者数の推移　＞　：　

　　　 ６５歳以上　　　　65歳〜74歳　　　　７５歳以上　　　　＞戻る

 

◆介護保険の利用状況

○介護サービス　月間受給者数推移

• 受給者数は、居宅サービスを中心に、この５年間で約１．８倍に拡大
  • この５年間で、居宅サービス利用者は２．１倍、施設サービス利用者は１．３倍に増加
  • 施設サービスの直近３年間の利用者伸び率は１．１倍とやや減少傾向が
  • 居宅サービスの受給者の構成比は、２０００年度の６７％より２００５年度には７７％と大きく伸長
  • サービス利用率（平均月間利用者数÷年度末認定者数）は７０％台で推移（５年間で８％程度上昇）
• 居宅サービスでは、要介護１受給者数が急増、施設サービスでは各施設タイプとも同程度の伸長
  • 居宅サービスの受給者推移は、この５年間で要介護１は２．６倍、要支援２．２倍、要介護全体で２．１倍に
  • 施設サービスの受給者推移は、この５年間で福祉施設・保健施設・療養型とも約１．３倍に
  • 施設サービスの受給者構成比（収容率）は、福祉施設４６％、保健施設３８％、療養施設１６％に

 

受給者数　：　居宅サービス（属性別）・施設サービス　　　＞戻る

 

　　　　　　

 

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○介護サービス　月間給付額及び給付単価の推移

• 給付額はこの５年間で１．７倍に拡大（受給者数１．８倍）、平均月間給付額は約４８００億円に
  • この５年間で、居宅サービス給付額は２．５倍、施設サービス給付額は１．２倍に増加
  • 居宅サービス給付額の構成比は、２０００年度の３４％より２００５年度には５２％と施設サービス給付額を 逆転。平均月間給付額は約２５００億円に
• サービス別で見た平均給付単価はこの５年間で１３％減少して、月間一人当たり平均１４万円に
  • 居宅サービスの平均給付単価は、この５年間で２０％増加、施設サービスのそれは、逆に６％減少
  • 施設サービスと居宅サービスの平均給付単価格差は、この５年間で４倍から３倍に縮小、それぞれ３０万円／月・人と１０万円／月・人に
• 介護種別で見た平均給付単価は、この５年間で居宅要支援は横ばいで、居宅要介護は７５％に縮小
  • 居宅サービスの介護種別ごとの平均給付単価は、この５年間で要支援は横ばいの４万円／月・人、要介護１・要介護全体は７５％に縮小して、それぞれ９万円／月・人、２１万円／月・人に
  • 介護種別ごとの平均給付単価の格差は、要支援と要介護間で７倍から５．３倍に縮小、要支援と要介護全体では、３倍から２．３倍に縮小

 

給付単価の推移　：　居宅サービス（介護属性別）　　　＞戻る

 

○第１種被保険者保険料と給付額推移の見通し

• 給付額は介護制度で定める介護サービスの水準（３年毎に見直し）と受給者数に依存
  • 給付財源は、５０％の税金と５０％の介護保険料で捻出（ご参考：セカンドライフ　　　　健康という座標軸）
  • この為給付額増加は財政支出増加と介護保険料値上げに直結
  • 少子高齢化に向かう環境の中で、受給者増加（給付額増加）は必然の状態（過去６年間の６５歳以上人口の増加は１．３倍に）に
  • 現行介護水準維持の場合の試算は下記に。介護制度改定の巧拙が重要に
• 介護保険料は、地域の提供できる介護水準で決まるため、地域によって保険料格差が発生
  • ２００３年全国平均３２９３円／月、４０００円以上７％・１５００円〜３０００円は４３％等
  • 介護認定率の地域格差も、給付額の増加を通じて保険料に直結

 

○介護事業者・施設数推移と利用状況

• 注目（事業所数伸び率・事業所当たり利用者数）の事業者は、地域密着型・居宅通所型・介護保険施設・新設の予防介護型
  • 事業所数伸び率３０％以上は、地域密着型と居宅通所型。新設の予防介護型（６．３万ヶ所：２００６年）
  • 事業所当たり利用者数伸び率５％以上は、地域密着型と介護保険施設。新設の予防介護型
• 受給者の介護度と利用される施設のタイプには、それなりの関連性が
  • 療養施設は、介護度に比例した利用者分布を。保健施設は介護度中位に山を、福祉施設は介護度重度で飽和する利用者分布を
  • 介護種別で利用施設の順位を見ると、軽度介護者は、保健施設・福祉施設の順、重度介護者は、福祉施設・療養施設の順

 

＜　利用状況　＞　：　

　　 事業所当たり利用者数　　　　施設の利用者介護種別分布


　　 介護種別で見た施設利用　　　＞戻る

 

○介護施設の受給者当たり月額費用及び入院期間分布

• 受給者の月額費用は、介護施設のタイプにより１．４倍程度、要介護度の別で１．４〜１．７倍程度の費用格差が発生。また、前年比では概ね３〜５％程度の費用減少が見られる。（ご参考：社会保障とライフ・プラン）
  • 施設タイプ別では、福祉施設と保健施設はほぼ同程度、療養型は１．２〜１．４倍程度月額費用が高い。療養施設は、予防介護・居宅サービスの流れと給付額抑制（コスト高）面より病床の削減対象に
  • 受給者の介護種別により、療養型は１．７倍程度、他のタイプは１．４倍程度の費用格差が発生
  • 各施設タイプとも前年比で３〜５％程度の費用減少が見られる
• 入院期間より見て、保健施設は短期入院型、福祉施設は長期入院型、療養施設は要介護度との関連が深く、軽度の受給者は短期入院・重度の受給者は長期入院の傾向が（退職で実感すること）
  • 福祉施設は、１年以上の入院者は６１〜７１％・６ヶ月未満の入院者１９〜２５％で、その構成分布は介護度にあまり依存しない状況。タイプとして長期入院型
  • 保健施設は、６ヶ月未満の入院者５８〜６８％・１年以上の入院者１６〜２５％で、その構成分布は介護度にあまり依存しない状況。タイプとして短期入院型
  • 療養施設は、６ヶ月未満の入院者４４〜７４％（軽度の人ほど構成比大）・１年以上の入院者１７〜４１％（重度の人ほど構成比大）で、介護度の依存度が高い。タイプとしては前出施設の折衷タイプ

 

＜　入院期間分布　＞　：　

福祉施設　　　保健施設　　　療養型医療施設　　　＞戻る

◆この６年間の介護環境の変化

 

表１ この６年間の介護環境の変化　(公共サービスの動向）

年	給付拡大と財政負担	介護保険料の動向	制度改定
2007	06：「国の借金」最大の834兆円・06年度末0.8％増 03：介護利用 月３３７万人 在宅サービス費５割超	04：介護保険の対象範囲拡大、09年度実施見送り…厚労省方針 03：介護保険の対象拡大、６割が慎重論 厚労省アンケート	07：療養病床:「病床数２０以上」で微増国の削減方針進まず 05：ボランティア活動で介護保険料軽減　厚労省が新制度 03：療養病床、介護施設への転換促す厚労省が支援拡充 02：高額医療・介護合算 新制度の収入、年齢別の上限額定める 02：介護保険で「個別・短時間型」リハビリ　厚労省導入へ
2006	11：１．７倍の７８０万人に　２０２５年度の要介護者 07：介護保険、２５％が赤字　４２３団体で借金３９２億円 06：国の借金、８２７兆円　過去最高を更新 03：財務省、負担の世代間格差見直し論　消費税率アップへ地ならし		11：高齢者標準世帯、高額医療・介護を合算　上限年５６万円 08：新介護保険制度（介護予防・地域密着型サービス）の実施で変わる介護マーケット
2005		02：介護保険料、８％上げへ　４０ 〜６４歳、来年度から
2004	07：社会保障改革懇談会３０日発足　保険料と税負担の均衡見直し焦点　消費税率アップ難航か 05：社会保障費１５２兆円に　平成３７年度、現在の１．８倍　国民負担率も４６％に拡大	07：障害者施策統合に慎重　介護保険で健保連　財政試算など不明確 06：障害者福祉　介護保険と統合有力　社会保障審部会、中間報告素案で提示 05：介護保険　一元化　障害者支援と統合に異論も	11：比から看護士・介護士、０６年度にも日本へ　ＦＴＡ合意 10：高齢者住宅も介護保険対象、０６年度から実施…厚労省
2003		06：社会保障審議会が意見書　高齢者給付抑制と若年層負担軽減 05：改定介護保険料１３．１％増　高齢者増加主因・６５歳以上　平均３２９３円	06：高齢者介護、痴呆ケアに力点　厚労省研究会、将来のあり方で報告書
2002		08：介護保険料、平均３３０円アップ 05：負担増を最小限に抑えよ【介護保険】	06：介護保険３年目 初の見直し作業が本格化、引上げ：訪問介護、引き下げ：施設サービス 05：個室型特養ホーム居住費　厚労省　試算自己負担　月額４万−５万円
年	介護サービス 利用状況	介護ビジネス	その他
2007	08：介護保険サービス利用者、前年比初の減少…利用制限が一因 07：介護認定、軽度への判定傾向で　不服審査請求が急増 05：介護予防サービスの利用低迷、４政令市が対策に躍起 03：介護利用　月３３７万人　在宅サービス費５割超 03：介護予防の利用低調、自治体６割が予算消化５０％未満 02：「介護予備軍」の認定要件を緩和　厚労省が見直し	08：コムスン、２０２事業所で不正請求返還４億３千万円 08：介護労働調査　５人に１人離職　４割以上が就業１年未満 07：介護保険法を与党が改正へ、立ち入り検査を強化方針 07：福祉・介護の給与引き上げ、人材確保へ厚労省が諮問 06：コムスンが不正介護報酬１億円、神奈川県など返還手続きへ	08：介護労働者１２％、１年で事故やけが経験　暴言等も３割 08：民間版「介護保険」に道、法制審が中間試案 03：「在宅」床ずれ１２万人…学会推計　老老介護背景に４３％重症化
2006	10：介護難民４万人?　日医調査、中医協で論争に		10：損保の不払い、底なし沼。医療・介護保険でもボロボロ
2005		12：介護報酬改定、政府が０・５％引き下げ方針決める 07：介護報酬の改定答申、年３０００億の給付費抑制見込む	12：生保３４社の第三分野保険　保有契約６．３％増　社会保障不安で需要拡大 11：老後の住まい　介護や看護が必要な人が入れる施設 07：将来に不安、高齢者の約７割 01：経産省、家庭用ロボットの安全基準作成へ〜介護など用途別に
2004		02：訪問看護ステーション、介護報酬改定で減収減益だが黒字は確保
2003	03：利用の適正化と効率化を【介護保険３年】	01：介護報酬の新単価を答申 01：不正許さず効率化徹底を【介護報酬見直し】	01：患者と家族考えて協力を【医療と介護】
2002	06：介護サービスを評価　千代田区：満足「意思・人格の尊重」/不満「ショートステイの食事」 04：【待機】求められる入所基準整備	07：効率化で労働条件改善を【介護保険見直し】

 

◆参考資料

○世帯構成・第１号被保険者数

参考資料　：　高齢者世帯数推移　　　第１号被保険者数推移　　　＞戻る

 

◆出典・語句説明

○出典

• 厚生労働省　介護保険事業状況報告（年報、暫定 平成１９年３月）。平成１８年　国民生活基礎調査の概況。平成１８年介護サービス施設・事業所調査結果速報
• 総理府統計局　総合月次統計データベース

○語句説明

• 要支援状態：常時介護が必要な状態の軽減、悪化の防止ために支援が必要な状態。身体上または精神上の障害で、一定期間日常生活を営むのに支障がある状態。（2006/04施行）
  
  
• 介護予防サービス：市町村は、居宅要支援被保険者が指定介護予防サービス事業者から、介護予防サービスを受けたときは、介護予防サービス費を支給。なお、この指定介護予防サービス事業者の指定は、申請により事業所ごとに都道府県知事が行う。（2006/04施行）
  
  
• 地域密着型介護予防サービス：「地域密着型介護予防サービス」は、介護予防認知症対応型通所介護、介護予防小規模多機能型居宅介護および介護予防認知症対応型共同生活介護とする。市町村は、居宅要支援被保険者がこのサービスを受けたときはその費用を支給する。この事業者の指定は、申請により事業所ごとに市町村長が行い、その市町村内で効力を有する。（2006/04施行）
  
  
• 地域密着型サービス：「地域密着型サービス」とは、夜間対応型訪問介護、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護および地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護とする。市町村は、 要介護被保険者がそのサービスを受けたときはその費用を支給。この事業者の指定は申請により事業所ごとに市町村長が行い、その市町村内で効力を有する。（2006/04施行）
  
  
• 地域支援事業：市町村は、被保険者が要介護状態等となることを予防するとともに、要介護状態等となった場合においても、可能な限り、地域において自立した日常生活を営むことができるよう支援するため、介護予防事業、包括的支援事業（介護予防マネジメント事業、総合相談・支援事業および包括的・継続的マネジメント支援事業をいう）その他の地域支援事業を行う。利用者に利用料を請求できるとともに、老人介護支援センター等に事業の委託ができる。（2006/04施行）
  
  
• 地域包括支援センター：包括的支援事業その他厚生労働省令で定める事業を実施し、地域住民の心身の健康の保持および生活の安定のために必要な援助を行う施設である。同センターは、要介護認定等の申請に関する手続きを代行でき、総合的な相談窓口、介護予防マネジメント、包括的・継続的マネジメント、といった援助を行う。（2006/04施行）
  
  
• 療養型施設：急性期の医療を完了し病状が安定した後も、退院が困難で、療養を継続する必要がある患者のために用意された病棟。一般型病棟とともに療養型病棟を備えている入院施設は、「療養型病床群併設施設」と呼ばれる。施設により、慢性の病気などによって長期の入院療養が必要な場合などに、医療保険適用の医療・看護・リハビリテーションを提供する医療療養型と、社会的な生活に戻るための療養が依然必要な要介護者を対象として、療養・介護・看護・リハビリテーション・社会訓練を提供している介護療養型の2種類がある。
  
  
• 介護老人保健施設：介護を必要とする高齢者の自立を支援し、家庭への復帰を目指すために、医師による医学的管理の下、看護・介護といったケアはもとより、作業療法士や理学療法士等によるリハビリテーション、また、栄養管理・食事・入浴などの日常サービスまで併せて提供する施設です。
  
  
• 老人福祉施設：老人福祉を行う施設のこと。法律では、老人福祉施設とは、老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、養護老人ホーム、特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、老人福祉センター、老人介護支援センターとされている。 特別養護老人ホーム（介護老人福祉施設）とは、65歳以上であって、常時の介護を必要とし、かつ居宅においてこれを受けることが困難である者などを入所させ、養護することを目的とする施設である。