所得環境の変化　(関連記事を参照：（１）　　　（２）　　　（３））

就業面	雇用面	制度面
・失業率、 ニート／フリータの増加 ・再チャレンジ政策 ・家計金融資産（二極分化） ・生活保護者、ホームレスの増加	・雇用形態の変化（派遣、パート化拡大） ・裁量労働の拡大、財務改善／競争力強化 ・定年延長（2006/04） ・経済成長	・年金改革 ・定率減税廃止 ・所得税率の変遷 ・消費税、相続税

総理府統計局の統計情報から、所得格差に関連するデータをまとめました。

結果として

• 階級別に見た格差は、一定の倍率内で固定化されて推移
• 経済成長に伴い平均年収は、各階級とも均等に拡大、生活水準は向上
• 階級全体の所得幅は拡大推移、所得・金融資産の二極分化が進展
• 年収分布より見て、低所得層は高齢者世帯（５９歳以上）で構成され、年金、金融資産の多寡が生活水準（ご参考：退職者の生活）に影響
• 昨今の所得環境は、企業の人件費抑制政策、国家財政再建に向けた税制政策、個人のライフスタイルの変化等により、階級別の格差はともかく、実質的な所得格差は拡大の方向

 

所得格差の状況

「図１　世帯収入の格差推移」（勤労者世帯） ★この数十年間、収入の格差（上位２０％／下位２０％）は３倍前後で安定化 ★平均収入は、どの階級も経済成長に合わせ均等に増加 「図1-1　５分位、10分位収入格差推移」（総世帯） ★総世帯の収入格差は、この数年間で５倍→４倍（５分位）、 ７倍→６倍（10分位）と縮小 ★総世帯と勤労者世帯の格差の比は、約１．５倍 （５分位：勤労世帯格差／総世帯格差） ★階級分けの格差への影響も、おおよそ１．５倍 （総世帯：10分位格差／５分位格差） 「図２　収入階級別世帯月間平均収入推移」（勤労者世帯） ★過去に、２０年間で平均収入が５〜６倍に伸びた時も ★しかし、 この２０年間では各階級とも２０％程度に鈍化 「図2-1　世帯の月間平均収入推移」（勤労者世帯） ★世帯収入の中央値はこの数十年間、平均値の約９３％程度で推移 ★この数十年間大卒男子初任給は、世帯平均収入の３０〜４０％の間で推移 ★この１０年間で、世帯平均収入が約１０％減少 「図３　収入で見る世帯月間平均収入推移」（勤労者世帯） ★平均収入の幅（第一階級と第五階級間）が時代と共に拡大、 所得分散化が進展 ★他の階級間の幅は変わらず、第五階級の幅は時代と共に拡大、 富の偏在が進展 「図４　２００５年年収階級別平均年収格差」（総世帯） ★２００５年の収入格差（10分位／１分位）が１０倍に （参考：以前のデータとの乖離が大きいため） ★上位の階級へ上がるための障壁は、１分位→２分位（1.7倍）、 ９分位→10分位（1.5倍）が最大 「図５　２００５年世帯平均年収の分布（推計）」（総世帯） ★年収分布は、４００万円をピークに 右側に緩やかな傾斜を持つ分布を形成（２００５年） ★年収分布による世帯主年齢分布は、５６歳をピークに 右側の分布は５０歳代前半の世帯主で構成 「図６　各種指数（ＧＤＰ、法人数、人口、物価）の推移」 ★過去、各種指標は順調に拡大、しかしこの１０年間では ＧＤＰと物価指数は減少、他の指標の伸び率鈍化

 

◆家計の収支・資産と所得格差

• 家計の生涯収支は、この５年間（2002年〜2006年）で、収入及び支出とも減少（各５％、６％）しました。この結果は貯蓄の変化に現われ、家計の黒字高から貯蓄に回る金の流れ、すなわち貯蓄率が約４２％から約２６％に大幅に減少しました。この影響で、家計の生涯の形成資産（不動産含む）・金融資産（有価証券・生命保険含む）も急激に減少（各３０％、３９％）しました。家計の資産形成能力の減退と共に、平均の貯蓄力の低下で格差も拡大する方向に。
• 家計の金融資産のこの５年間（2002年〜2006年）の運用状況は、安全資産運用（預金・生命保険含む：約８２％）を中核にしながらも、リスク資産活用（有価証券増加率約１５０％）が積極化される傾向があり、この結果、家計の余裕資金の多寡が所得格差に影響を与えることに。また、家計の総資産に占めるリスク資産の構成比の増加で、金融・経済市場の変動（金利・為替・株価・ＧＤＰ・物価・金流）と家計の金融資産価値の変化が連動するようになるため、金融資産運用管理技術の巧拙が格差に影響を与えるようになっていきます。

 

　　　　　　

 

◆語句説明

○年間収入階級と五分位、十分位階級　　　>>戻る

• 「年間収入」は過去１年間の現金収入であるため、各年間収入階級の現金実収入の平均を12倍しても必ずしも当該階級内には入らない。
• 「五分位階級」とは、すべての世帯を毎月の実収入（現金収入）、世帯主の定期収入又は世帯の年間収入などを収入の低い方から順番に並べ、それを調整集計世帯数の上で５等分して五つのグループを作った場合の各グループのことで、収入の低い方から順次第I、第II、第III、第IV、第V五分位階級という。
• それぞれの階級について収入と支出をまとめたものが「五分位階級別」の結果であり、所得階層別に家計収支をみたり、所得の格差の動きをみたりする際に有用である。
• 「十分位階級」は、上記と同じ要領で10等分した場合の十のグループのことである。

○勤労者世帯、総世帯

• 勤労者世帯とは世帯主（家計上の主たる収入を得ている人）が会社、官公庁、学校、工場、商店などで雇われて勤めている世帯
• 総世帯とは世帯主が自営業、無職、上記勤労者世帯を含む全ての世帯

○所得税率の推移　　　>>戻る

年	1974	1984	1987	1988	1989	1995	1999	2007
最高税率	75%	70%	60%	60%	50%	50%	37%	40%
上記対象年収：万円以上					2000	3000	1800	1800