豪雨災害 (被災状況)
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戦後およそ70年間の記録(気象庁)から、我が国の大規模豪雨災害について調べた。大雨・土砂災害等の災害事象被災状況との関連、その推移を題材とした。

なお、大規模豪雨災害を、犠牲者が100名相当以上の風水害(気象庁)に絞った。

また、大規模豪雨災害は、複数の災害事象、複数の被災事象より構成される為、各々の事象の集計値は、重複計算になり、実際の発生件数より多い数値となることに注意する必要がある。

また、大規模豪雨災害の詳細、全般的な事例紹介は、当サイトの「豪雨災害 その被害」に、季節的な特徴は「その季節特性」に、地域的な特徴は「地域特性」に示した。

さて、(1)大雨・洪水・土砂災害などの災害事象や、(2)犠牲者数・建物全壊・床上浸水等の被災状況は、大規模豪雨災害と同様、時系列的には急減後、一定数ないしは一定被災規模の再発となった。年平均発生数でみれば、ざっと「2件→0.5件→0件→0.3件」といった推移となった。

但し、被災状況の「建物全壊」については、近年の発生事例で、被災規模増加傾向がみられ、過去の経済成長期の居住危険区域への居住空間拡張が、昨今の地球温暖化や集中豪雨などの異常気象多発状況下で、不安材料となった。

また、災害事象と被災状況の関連では、事例の平均値として、建物(全壊、床上浸水)と人命被害が大きい災害事象は、「暴風」と「高波・高潮」で、豪雨災害時の発生頻度は各々約6割弱、約3割強となった。被害が中位の災害事象は、「大雨」と「洪水」で各々の発生頻度は、約10割弱、約5割強であった。

また、被災状況の「犠牲者数、負傷者数、建物全壊」についての、各々の上位10事例ほとんどが、1950年代の大規模豪雨災害であった事が、我が国の戦後復興がいかに悲惨な、そして苦難に満ちた歴史であったかを、思い起こさせる。

 

◆災害事象、減少後復活の兆し

戦後70年間程度の大規模豪雨災害の発生状況(ご参照)は、急激に減少(平均2件/年→0.5件/年)して、1980年代後半から10数年間無発生となったが、近年になって数件(8年間で)の発生が継続しており、復活が懸念される状況となった。

戦後の経済復興、インフラ基盤の整備、高度経済成長が、大規模豪雨災害への抵抗力を高め、気象予報精度の向上、災害の予防・減災努力がその効果を発揮した結果と考えられる。

しかしながら、数件ではあるが、近年の持続的な豪雨災害の発生は、(1)過去の居住立地環境問題(居住区の都市郊外等危険地域への拡張)、(2)地球温暖化の進展や集中豪雨等の異常気象の頻発問題等を抱えるなか、大きな懸念材料とされる。

大規模豪雨災害によって誘発される洪水や土砂災害等の災害事象も、時系列的に同様の発生推移となった。豪雨災害の季節特性(ご参照)にもあるように、台風の被害急減によって、大雨や暴風の災害事象も急減した。

しかし、大規模豪雨災害の発生が無かった期間を除き、1970年代前半以降の40年間程度を見れば、災害事象はさほど大きな発生件数の差はなく、現状の災害の予防・減災対策に限界も感じられる。

 

   

 

被災状況推移へ

 

◆災害事象と発生確率

大規模豪雨災害は、異常気象等の気象現象が原因となって発生し、洪水や土砂災害等の複数の災害事象を誘発させて、人命被害を含め周辺環境に甚大な被害を与える。

ここでは戦後70年程度の事例より、どのような災害事象が、大規模豪雨災害にどの程度関与して起きているのか、図3に示した。

大雨による浸水災害は図3のその数値より、風台風等のわずかな例を除き、ほとんどの大規模豪雨災害の必然的な構成要素となっている。甚大な被害を発生させる豪雨災害の、ほとんどの事例に関与することになる、災害事象である。

また、暴風土砂災害、そして、洪水の3つの災害事象は、半数以上の大規模豪雨災害に付帯して発生し、甚大な被害の原因ともなっている。

そして、気象状況の潮位や台風の風力の影響を受ける災害事象「高波・高潮」は、大規模豪雨災害のおよそ33%程度の割合で関与し、沿岸部での浸水災害、船舶の遭難等の災害で周辺環境に甚大な被害を与えている。

 

 

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災害事象と被災規模へ

 

◆災害事象の季節特性

大規模豪雨災害における災害事象季節的な特徴について以下に図示した。

各々の災害事象の月別発生数は、災害の原因となる気象現象密接な関係があることを、如実に表現していることがわかる。

発生数の似た形状の(1)「大雨」と「洪水」のグラフは、春と秋の前線が影響しており、そして、(2)高波・高潮」と「暴風」のグラフは、秋口の強烈な台風が由来となり、また、(3)「土砂災害」のグラフは、春先の梅雨前線の集中豪雨が影響していると考えられる。

 

 

大規模豪雨災害による被害で、建物半壊と床下浸水の上位事例について表5および表6に示した。

建物半壊」に関しては、2000年代の2件等を除き、ほとんどが1950年代に 発生した豪雨災害が上位事例となった。

表5 豪雨災害建物半壊上位事例
豪雨災害(1948年以降) 半壊
(千件)
@伊勢湾台風:1959/09 113.1
Aジェーン台風:1950/09 101.8
Bルース台風:1951/10 47.9
C第二室戸台風:1961/09 46.7
D東日本台風:2019/10 24.8
E洞爺丸台風:1954/09 21.8
F台風第13号(近畿):1953/09 17.5
G集中豪雨(全国):2004/6〜10 16.7
Hキティ台風:1949/8 (参照 13.5
Iアイオン台風:1948/09 12.1

床下浸水」の上位事例では、その発生数は、1950年代から1970年代とほぼ均等に分散された。「床上浸水」と同様の傾向(1950年代の半減、他年代は増加)とみられる。

表6 豪雨災害床下浸水上位事例
豪雨災害(1948年以降) 床下
浸水
(千件)
@台風17号(中国・四国):1976/09 433.4
A狩野川台風:1958/09 389.5
B台風第13号(近畿):1953/09 351.6
C水害(近畿・中部・関東)
    :1961/6〜7
341.2
D水害(近畿・東海・四国)
    :1974/5〜8
317.6
Eジェーン台風:1950/09 309.0
F台風第6・7・9号(北九州・中国)
   :1972/7
276.3
G第二室戸台風:1961/09 261.0
H台風第23・24・25号(四国・近畿・北陸):1964/9 258.2
I水害(北九州):1953/06 254.7

 

最新の関連情報(1)へ

 

◆最新の関連情報(2)

 

<復興・生活支援>

 

◆参考資料

○気象庁:災害をもたらした気象事例

○消防庁:消防白書 災害情報一覧

○内閣府:災害情報 防災白書

 

 

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◆被災発生、急減後再発の兆し

対数軸に注意しながら、大規模豪雨災害の結果としての人命被害・建物被害等の被災状況推移を概観すると、豪雨災害と同様の推移(急減後再発の兆し)が読み取れる。

但し、大規模豪雨災害の発生が無かった期間を除き、1970年代前半以降の40年間程度を見れば、建物全壊被害を除けば、犠牲者、負傷者等の人命被害床上浸水被害横ばいあるいは減少傾向となっている。

大規模豪雨災害の発生数が、継続もしくは増加となる可能性がある中での、被災状況としての被害減少の可能性は、ある面、救いとも感じられる。

大規模豪雨災害の中で、犠牲者と建物全壊被害の上位事例を表1と表2に示した。

表1より、戦後5年から10年の1950年代の大規模豪雨災害がほとんどであった。戦後復興期の苦難がいかほどであったか脳裏に浮かぶ。

表1 豪雨災害犠牲者上位事例
豪雨災害(1948年以降) 犠牲者
(人)
@伊勢湾台風:1959/09 5,098
A洞爺丸台風:1954/09 1,761
B狩野川台風:1958/09 1,269
C水害(和歌山):1953/07 1,124
D水害(北九州):1953/06 1,013
Eルース台風:1951/10 943
Fアイオン台風:1948/09 838
G諌早水害(長崎):1957/07 722
Hジェーン台風:1950/09 539
I台風第13号(近畿):1953/09 478

表2の建物全壊被害も、西日本豪雨(水害(全国):2018/6〜7)を除き、戦後5年から10年の、1950年代の大規模豪雨災害が、同様に、大多数を占めた。

表2 豪雨災害建物全壊上位事例
豪雨災害(1948年以降) 全壊
(千件)
@伊勢湾台風:1959/09 40.84
Aルース台風:1951/10 24.72
Bジェーン台風:1950/09 19.13
C第二室戸台風:1961/09 15.24
D台風第13号(近畿):1953/09 8.60
E洞爺丸台風:1954/09 8.40
F水害(和歌山):1953/07 7.70
G水害(全国):2018/06〜07 6.76
Hアイオン台風:1948/09 5.89
I水害(北九州):1953/06 5.70

 

災害事象と発生確率へ

 

◆災害事象と被災規模分布

大規模豪雨災害の各々の災害事象が、居住空間にどのような影響(全壊、床上浸水)を与えるのか相関図に示した。また、円の大きさで犠牲者数を付加した。

概観すると、(1)台風に関係が深い「大波・高潮」と「暴風」の災害事象は建物全壊、床上浸水とも上位に配置され、(2)大雨」や「洪水」は、全体平均に近い中位の被害規模に位置づけられ、(3)土砂災害」は、居住空間に与える被害は低位となった。

犠牲者の被害状況からは、「大波・高潮」と「洪水」、「暴風」が上位に、全体平均に近い「大雨」、「土砂災害」が各々中位、下位となった。

ここで、大規模豪雨災害の負傷者数と床上浸水に注目して、その上位事例を記載する。負傷者の被害状況では、2004年の全国的な集中豪雨を除き、ほとんどの災害1950年代に発生したものであった。

表3 豪雨災害負傷者上位事例
豪雨災害(1948年以降) 負傷者
(千人)
@伊勢湾台風:1959/09 38.92
Aジェーン台風:1950/09 26.06
B水害(和歌山):1953/07 5.82
C第二室戸台風:1961/09 4.97
D諌早水害(長崎):1957/07 3.86
E集中豪雨(全国):2004/6〜10 2.93
F水害(北九州):1953/06 2.72
Gルース台風:1951/10 2.64
H台風第13号(近畿):1953/09 2.56
Iアイオン台風:1948/09 1.96

床上浸水の被害状況に関しては、1950年代の豪雨災害が上位事例の半数と減少し、1970年代が3件、1960年代が2件となり、期間的に分散した。

表4 豪雨災害床上浸水上位事例
豪雨災害(1948年以降) 床上
浸水
(千件)
@水害(北九州):1953/06 200.0
A伊勢湾台風:1959/09 157.9
B台風第13号(近畿):1953/09 144.3
C狩野川台風:1958/09 132.2
D第二室戸台風:1961/09 123.1
E台風17号(中国・四国):1976/09 101.1
Fジェーン台風:1950/09 93.1
G水害(近畿・東海・四国):1974/5 77.9
H水害(近畿・中部・関東):1961/6 73.1
I台風第6・7・9号(北九州・中国)
   :1972/7
55.5

 

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災害事象と季節特性へ

 

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◆最新の関連情報(1)

最近の豪雨災害の防災関連状況について、各種情報(2000年以降)をもとに、以下に記載する。

大規模豪雨災害(詳細内容は「その被害」を参照)は、近年減少したが、豪雨災害としては一定数の発生が有り、尚一層の防災・減災対策が必要であると感じる。

 

<居住環境対策>

<行政改革>

<防災・減災>

最新の関連情報(2)へ

 

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