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原子力の造反 福島原発事故(2011/03)

想定外とは   避難とその先   対策と原因調査   政策の行方

 

◆失ったコントロール

○なぜ福島第一原発だけが

巨大地震(東日本大震災)が突然発生(2011年3月11日)した。誰も予想もしていなかった震災で、国内の4個所11基の原子炉が自動停止した。それらは震源に近い東北電力女川原発、東京電力福島第一原発、同第二原発、日本原子力発電東海第2原発の、4地域の原発であった。

その中で、福島第一原発のみが震災後に発生した巨大津波の実害(想定を超える波高)を受け、懸命な復旧作業の過程で、原子炉の冷却機能を一定期間失った。その結果、炉心溶融とそれに伴う水素爆発(1号機及び3号機の原子炉建屋)が起きて、原発事故としては最大規模となる、レベル7の事故評価(チェルノブイリ原発事故相当)となった。

○水没した電源

稼動中の原子炉を冷温停止するためには、以下の操作を実施する必要があった。

  1. 原子炉停止
  2. 原子炉の崩壊熱の除去(交流電源喪失時)
  3. 冷温停止状態(原子炉内の水の温度が100℃以下)まで冷却

福島第一原発では、事故当時3基の原子炉が稼動していたが、地震で外部交流電源喪失後、すぐにバックアップシステムが起動して、非常用電源(発電機とバッテリー)を利用した冷却機能が動いていた。しかし、その後の津波による罹災でほぼ全電源を失い、その後の努力もむなしく、いずれの原子炉も冷却機能を喪失して炉心溶融に至った。

○帰らざる河、冷却停止期間

バックアップシステムの高圧注水冷却機能が働いていた1号機だったが、津波来襲前その機能を停止していた為、電源水没後には制御不能(当初稼動中と誤認)となった。このため、高圧注水冷却機能を代替する新たな高圧冷却方策を構築するまでの時間が、1号機の炉心溶融に直結する冷却停止期間となった。

同様に2・3号機でもバックアップシステムが稼動していて、津波襲来時には、高圧注水冷却機能は幸いにも運転中であった。このため、津波による電源喪失の有無に関わらず運転の継続可能だった。しかし、冷温停止のためには低圧注水冷却方式への切替が必要であり、両号機とも停止後の切替移行時間長期化が、炉心溶融に直結する冷却停止期間となった。

以下に、原子炉自動停止から水素爆発に至る、各々の原子炉の状態遷移を記載した。

○各原子炉の緊急復旧対策の状況

 

■■ 福島原発事故の5日間 ■■

 

◆想定外がもたらしたもの

○甚大で広範な被害

起こるはずも無いと思われた原発事故の被災状況を追ってみた。たたき台として、以下に事故後3ヶ月間の新聞記事を整理・図示した。想定外として安全管理面より除外した前提条件が崩れた時、生活圏全般に、如何に甚大で広範な被害が及ぶかを如実に示す結果となった。

 

☆☆ ひと休み ☆☆

<遠望 秘湯に浸かり (山梨 ほったらかし温泉)>

 

○「想定外」、埋没しないか

安心・安全の立脚点であった「想定外」を、真に当事者としてふさわしい責任部署が、客観的かつ中立的な立場から再構築することが、今後の原発事業の経営と事故の防止に必須条件となったと改めて感じた。

想定外免責事項という意識が底流にある中、原子炉の冷温停止、被害者救済と生活圏回復という復旧・復興事業が、最優先事項として進んでいく過程で、責任問題うやむやになり、今後予定される、政府によるエネルギー政策の再考の際にも、「想定外」が再度埋没することが無いよう望みたい。

 



無知の知 DVD 2015/11
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◆避難とその先

○各々の判断

放射能に汚染された生活圏に居住していた人々の、原発事故後の3ヶ月間を、関連記事より以下に概観した。緊急避難命令のもと、自主避難も含め、それまでの生活とは決別して、新たな避難先で、非日常的な日々を過ごすことになった。

不安定な原発事故対応と放射能汚染地の復旧長期化、働く場の喪失、遅々として進まぬ仮設住宅の建設、保障・賠償問題のゆっくりとした進展、このような環境の中で、県外避難者約3万人(2011年04月)を含め、各々の判断で、当面の生活環境を再構築していくという現実に直面した。

 

○誰が責任を

度重なる避難命令でその範囲は拡大され、汚染情報の開示もない中逃げ惑い、対象者が急拡大した。住み慣れた場所を離れた人々の今後の生活と家計の所得は、どのように保障され、過去の苦労の末に築き上げ喪失したも同然の、その財産生活環境の回復は、誰が責任を持って遂行できるのだろうか。

 

◆事故対策と原因調査

○冷温停止、薄明の道程

事故後の迅速な初期対応に失敗したため、原子炉内の燃料が溶融して水素爆発が起きた。東電は廃炉を決定して、当面の冷温停止と溶融燃料の取り出し、解体廃炉に至る、数十年間の長期工程表を発表(4月中旬)した。その中で冷温停止の目標は、遅くても9ヶ月以内に完了と設定された。

当面の対応として、原子炉の冷却手段は、現状の海水注水冷却を継続し、新たな問題として浮上した「使用済み核燃料の冷却」は、燃料プールへ、消防車等の放水による注水で冷却する対策を取った。最終的な冷却方法は、その後、外部電源が復旧したので、両核燃料とも海水冷却から淡水冷却へ切替、そして、「汚染浄化装置」と組合わせた「循環注水冷却方式」に決定された。原子炉の冠水冷却は当初より有力であったが、機器損傷の危惧より断念された。

 

○汚染水対策、流入と滞留

原子炉の冷温停止作業が続く中、新たな問題も発生した。それは、原子炉及び格納容器の密封性が損なわれた結果、流入する地下水と循環する冷却水が日々汚染され、原子炉建屋周辺に継続的に滞留して、汚染水の海洋への流失リスクが高まったことだ。実際、4月初旬には止水されたがその一部の汚染水は、トレンチ立坑を通り放水口に漏れ出し、一定の期間海洋を汚染した。

汚染水の増加を防ぐための方法(冷凍壁、循環注水冷却)が検討されると共に、汚染水の管理面で、汚染水の保管・貯蔵機能、そして除染・無害化(汚染水浄化装置)機能を連結し全体管理を担う、循環注水冷却方式の採用が決まった。このシステムが安全・確実に運営され、将来にわたり維持・保全されることが期待された。

 

○作業環境、復旧へ始動

東電社長の原子炉廃炉表明(3月末)を受けて、廃炉作業の工程表が4月に発表され、その改訂版が5月に提示された。遅くとも9ヶ月以内の原子炉安定化を目指すその計画で、当面の目標が明確化され、全体としての長期計画が設定された。

3月中旬の外部電源の復旧から各種作業の進捗も加速され、4月に入りモニタリングポストの復旧、建屋の状況撮影、重機の遠隔操作によるがれきの撤去、建屋内へのロボット投入等作業環境の事前整備も進んだ。5月には原子炉建屋に入り、建屋の換気、計測器調整等作業環境の復旧も進み、1号機建屋内作業可能な環境となった。尚、2号機建屋内は高濃度に汚染され、立入り作業は困難な状態であった。

 

○原因究明、スタート台に

原発事故後早々にIAEA(国際原子力機関)より、原因究明のための専門家派遣準備の発表があったが、メルトダウン阻止の緊急事故対策が安定化しないうちは、だれも動けない状態が続いた。3月後半になって「圧力容器損傷」の言及が東電及び原子力安全委よりあった。

4月中旬には、原子力安全・保安院より最悪の「レベル7」の暫定評価が出て、4月後半に「水素爆発は、排気の遅れが原因」との米紙発表もあった。そして、5月後半になって東電の解析結果として、「メルトダウンと圧力容器損傷の恐れ」という状況認識の発表が出てきた。原因及び状況報告は、かような小出し状況が継続された。

3月後半からの自衛隊有人ヘリや無人ヘリによる建屋撮影、4月中旬の米国製無人ロボットの原子炉建屋内投入等調査活動が始まったが、事故対策のための建屋内の作業環境確保が主目的であった。このような状況下で、IAEAの調査団が訪日、東海第二原発視察(5/26)、福島第一原発視察(5/27)と調査活動を開始(調査報告書素案を日本政府に6/1提出)した。それに引き換え、事故原因解明のための国内の調査委員会は、5月末になってようやく3チームが編成されたが、本格的な調査はこれからの段階であった。

 

○事故対策と管理、3ヶ月の推移

 

 



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○中長期ロードマップの概要

前出の図は3ヶ月間の事故対策状況であったが、3月末の東電社長謝罪と原子炉の廃炉表明を契機に、事故収束と廃炉に至る工程を示す青写真の提出が早期に求められた。東電は原子炉安定化(6〜9ヶ月)工程表を4月中旬に公表し、「余震対策」、「環境改善」の課題解決策を付加して5月に中長期工程表を発表した。以下に、中長期工程表の2011年12月バージョンである「中長期ロードマップ」で、その概要を抜粋した。

 

      

 

◆原子力政策の行方

○当面の稼動対策

原発事故を受けて、稼動中であった原子炉については、当面の安全稼動の保証が問題となった。緊急対策として、津波による電源喪失時の対策指示が3月末に出され、4月に対策報告が投資額を含め電力各社より提出された。同様に海外各国でも原発の緊急点検が始まった。また、政府の要請を受けた浜岡原発も、稼動中の原子炉を5月に停止した。

事故により信頼を失った安全基準の再構築が必要となったが、事故原因の調査と同様、こちらも手がつけられない状態が続いた。国内の点検検査で停止中の原発もその影響を受けて、新たな基準の無い中での再稼動もできずに、それが電力不足問題という緊急の対策課題となった。急ぐべき事故原因調査も、5月中旬に東電の「メルトダウンのおそれ」という解析結果の公表があって、5月末になって、ようやく3チームの調査委員会の発足が決まったという牛歩の進捗となった。

 

○中長期的な稼動対策

世界の原子力政策は、原発導入計画の大幅増加基調(世界の原発166基増の計画。2011/01)を受けて、国際原発商戦が加熱中であったが、福島原発事故を受けて、推進一色から大きく「推進と脱原発」の2極化に転じた。

日本の原子力政策は、原子力事業を「原子力立国、電力の中核電源」と位置づけ、原発の推進にまい進してきた。しかし、事故後の@建設計画の中断/延期、A定期点検中原発の再稼動延期、B組織問題噴出等の動向をみて、「中断/静観」状態へ舵を切った。この結果、推進加速で改定作業中だった原子力大綱の作成作業を急きょ中断した。詳しくは、「原子力政策 推進と転換の狭間で」を参照のこと。

 

◆語句、出典

○語句

 

☆☆ ひと休み ☆☆

<一景 (健康散歩)>

 

○出典

 



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