＜原子力開発の再開（〜１９５５年）＞

• 敗戦の後遺症
  • 戦前、戦中より進められた原子力研究の全面禁止（非武装化）（1945年）
  • 広島、長崎の原爆被災経験。今も残る原爆症被爆者救済問題
• 長い道のり 、国際社会復帰と経済離陸を経て
  • 占領政策の転換
    • 米ソ対立表面化（1946年）。防共の砦、経済の自立化（1948年）
  • 日本の独立と自由経済への移行
    • 朝鮮戦争（1950年〜1953年）。対日講和条約、日米安保条約発効（1952年）
    • ＩＭＦ（国際通貨基金）、国際復興開発銀行加盟（1952年）。ＧＡＴＴ加盟（1954年）。戦前の経済水準を凌駕（1955年）
  • 国際社会への復帰と経済の離陸
    • 日ソ国交回復、国連加盟（1956年）
    • ＧＤＰ１．６倍（1955年→1959年）。エネルギー多様化（石炭→石油。原子力開発）
  • 米ソ冷戦と日米安保（1960年調印）
    • 軍拡競争（水爆／大陸弾道弾ＩＣＢＭの実験）、キューバ危機（1962年）、ベトナム戦争（1964年〜）
• 平和利用のもとの「開発と利用促進」
  • 原子力研究３原則（平和利用。1954年）、原子力基本法（開発と利用促進）制定（1955年）
  • 第五福竜丸、ビキニで被爆（1955年）→原水爆禁止署名運動（1955年）

＜原発の急増設と核燃料サイクルの立ち上げ（〜１９９９年）＞

• 急速に拡大した原発設置
  • 我が国初の原発の営業運転（茨城県東海発電所）開始（1966年）
  • 高度経済成長と第１次石油危機（1973年）→エネルギー政策の多様化（石油依存の脱却と省エネ）→第２次石油危機（1979年）→バブル崩壊（1986年〜1991年）→失われた１０年（〜2000年）
  • 電源三法創設（1974年）と補助金交付による電源立地促進で新設急増
  • 年１．５基ペースで建設、稼動し累計５１基（1999年）に急拡大。電力発電量の約２３％（2003年度、火力発電約67％）を分担
• プルサーマル計画の立ち上げ
  • プルサーマル計画策定（1961年）→早期開始、閣議決定（1997年）
  • 我が国初の使用済み燃料再処理施設（東海研究開発センター）稼動（1977年）→動燃の東海再処理工場（茨城県）本格運転（1981年）→火災・爆発事故（無期限停止）（1997年）→使用済み燃料の中間貯蔵の法整備（施設外貯蔵が可能に）（1999年）。核燃料棒加工会社ＪＯＣ（茨城県）、臨界事故で２名死亡（1999年）
  • 日本原燃のウラン濃縮施設（青森県六ヶ所村）操業（1992年）
• 高速増殖炉の研究、開発の促進
  • 実験炉「常陽」（茨城県）、定格運転に入る（1983年）
  • 原型炉「もんじゅ」、臨界（1994年）→冷却ナトリウム漏洩事故で停止（1995年）
• 放射性廃棄物の処分政策の立ち上げ
  • 日本原燃の低レベル放射性廃棄物埋設施設（青森県六ヶ所村）、操業開始（1992年）

＜原発新設スローダウン、先行投資維持と景気浮揚で原子力立国政策提唱（〜２０１０年）＞

• 原発の新設、笛吹けど踊らず
  • 実らぬ設置支援策
    • 立地地域振興で特別措置法改正（2000年、2010年）、電源三法交付金制度改正（2003年）と積極支援
  • 原発不信、払拭の努力も
    • 原子力安全・保安員発足（2001年）、原子炉等規制法改正（国の検査制度新設、国際レベルの防護水準引上げ）（2005年）等の安全支援策も
    • 蓄積された原発関連事故がボデーブローに（米スリーマイ島原発事故（1979年）、ソ連チェルノブイリ原発事故（1986年）、東海再処理工場火災・爆発（1997年）、ＪＯＣ臨界事故（1997年））
    • 収まらぬ原発不信（米国同時多発テロ事件（2001年）、国内原発不正多発（東電トラブル隠し（2002年）等）、東北電力巻原発（新潟）住民投票で建設断念（2003年）、新潟県中越沖地震で東電柏崎刈羽原発被災（2007年）→全機営業運転開始（2011/02））
  • 穏かな景気回復の中、リーマンショック（2008年）、ギリシャ債務危機（2010年）と経済低迷
  • ２０００年以降、原発新設５基と急降下
• 原子力立国政策の提唱 、投資継続に向けて
  • 原発を基幹電源に、１４基以上新増設
    • エネルギー政策基本法成立（2002年）→エネルギー基本計画策定（安定供給、環境適合、効率化）、原発を基幹電源に（2003年）→原子力政策大綱（2030年以降も30〜40%は原子力で）（2005年）→経産省、新国家エネルギー戦略（原子力立国を柱の一つ）（2006/05）→原子力立国計画（原子力産業の国際的展開支援、核燃料サイクルの推進、高速増殖炉の早期実用化、放射性廃棄物対策の強化）策定（2006/08）→エネルギー基本計画（原子力立国を中核に）閣議決定（2007年）→低炭素社会づくり行動計画（原発中核、2020年ゼロ・エミッション電源を50%以上に）、閣議決定（2008/07）→エネルギー基本計画第２次改定（原発を基幹電源、新増設１４基以上、温室ガス３割減）（2010/06）→原子力委員会、新原子力政策大綱（高速増殖炉開発や原発輸出が焦点）の検討着手（2010/10〜）
  • 原子力産業の国際展開を
    • 日本の原発ノウハウ輸出、官民協議（2009/06）→原発産業の海外進出支援（技術開発補助）、官民で３年間累計１００億円（2009/08）→日本政府、ベトナム原発に低利融資（約7500億円）提示（2010/04）→国際原子力開発（原発輸出が主目的）設立（2010/10）→世界の原発１６６基増（2011/01）→ＩＥＡ、世界の原発７割増、２０３５年に（2011/11）
  • 悩めるインフラ（次世代原発開発、最終処分場の確保）整備
    • 原子力政策大綱（高速増殖炉、2050年頃から商用化）（2005年）→次世代軽水炉（2030年頃からの大量廃炉への代替炉建設）の技術開発着手（2008年〜）→高速増殖炉「もんじゅ」、約１４年５ヶ月振りに試運転再開（2010/05）、トラブルで停止（2010/08〜）→次世代軽水炉、技術開発の中間評価（2010/08）
    • 特定放射性廃棄物の最終処分の法律成立（2000年）→最終処分場の募集開始（2002年〜）→最終処分の法律改正（地層処分が必要な再処理施設やＭＯＸ燃料加工施設を追加）（2007年）→最終処分計画（平成40年後半より地層処分開始）、閣議決定（2007年）
• 回らぬ核燃料サイクル
  • 動き出したプルサーマル原発
    • ＭＯＸ燃料加工施設の立地協定（青森県六ヶ所村、日本原燃）締結（2005年）→ＭＯＸ燃料加工工場の建設着工（2010年）
    • プルサーマル原発（ＭＯＸ燃料使用）の営業運転開始（九電玄海原発、我が国初（2009/11）、四電伊方原発（2010/03）、東電福島第１原発（2010/10）、関電高浜原発（2011/01））。電事連、プルサーマル計画見直し（2015年度までに16〜18基導入）（2009/11）
  • 未完の再処理工場、限界に近づく使用済み核燃料保管
    • リサイクル燃料貯蔵（株）設立（青森県むつ市、東電・日本原子力発電）（2005年）→全国の原発所内の貯蔵施設で、使用済み燃料約６０万本貯蔵。一部は日本原燃埋設センター（青森県六ヶ所村）で埋設処分（2009/03）→使用済み燃料中間貯蔵施設（青森県むつ市）、建設着手（2010年〜）
    • 日本原燃、使用済み核燃料再処理試験（最終試験）実施中（2006/03〜）→再処理工場（青森県六ヶ所村）、トラブル重なり完工２年延期（2012/10に、１８回目の延期）（2010/09）
    • 日本原燃、ウラン濃縮用新型遠心分離機開発（2002年〜）、旧型機更新移行開始（2009年〜）

＜東日本大震災で福島第一原発被災、原子力政策の転換検討へ（２０１１年〜）＞

• 安全対策の再考
  • 最悪事態の想定、ストレステスト導入
    • 津波安全対策指示（2011/03）→原発耐性検査（ストレステスト）、保安院通知（2011/07）→原子力安全庁（環境省外局）設置（2011/08）→原子力委、対テロ方針（2011/09）→原発の技術課題調査へ、保安院に専門家会議（2011/10）
    • 原発安全検査（ストレステスト）の導入：ＩＡＥＡ（2011/06）→ＥＵ、法整備（2011/11）
  • 被害最小化と復旧対策
    • 原発周辺の汚染マップ、文科省が作成・公表へ(2011/04)→文科省、ホットスポット把握に線量測定範囲拡大（2011/07）→文科省、放射性物質の拡散予測（SPEEDI）を公開（2011/11）
    • 飲料水、食品規制へ（放射能汚染の基準値提示）（2011/03）→緊急時避難準備区域は作付困難（2011/04）
    • 除染基本対策決定（2011/08）→福島汚染土、県面積の約１３％（環境省試算）（2011/09）
    • 原発防災重点区域（現行半径８Km〜１０Km圏内）を３０Kmに拡大（2011/11）
    • 原発賠償仮払い法成立（2011/07）→原子力損害賠償支援機構法（東電への賠償支援）成立（2011/08）→東電、賠償支払い累計約１．７兆円に（2011/12）
  • 原因究明とフィードバック
    • ＩＡＥＡ事故報告書（津波対策不十分、複雑な組織・対応遅れの可能性）（2011/06）→東電、事故報告（想定外の津波、多くの謎未解明）。政府事故調、原発事故中間報告（首相官邸が混乱の一因）（2011/12）
• 原発推進の頓挫
  • 建設工事、増設計画の中止
    • 上関原発（山口県）（2011/03）→福島第１原発、７・８号機（2011/05）→川内原発（鹿児島県）３号機（2011/06）
  • 定期検査後の再稼動問題
    • 伊方原発（愛媛県）３号機、断念（2011/07）→泊原発（北海道）３号機、再開（震災後初の移行）（2011/08）→原発稼働率、初の２０％割れ（再稼動が停滞）（2011/11）→国内原発５０基（全原発）停止（2012/05）
• 顕在化した先行投資の危うさ
  • 完成されない使用済み核燃料再処理工場
    • 再処理工場（青森県六ヶ所村）、トラブル重なり完工２年延期（2012/10に、１８回目の延期）（2010/09）→日本原燃、国内初のＭＯＸ燃料工場、六ケ所村で着工（２０１６年３月の完成予定）（2011/10）
  • 見つからない最終処分場
    • 最終処分場の募集開始（2002年〜）→高レベル放射性廃棄物、日本（青森県六ヶ所村）に返還。核燃料再処理（英仏両国からの返還は、1995年以降１４回目）終え（2011/09）→「福島原発全10基の廃炉を」（福島県知事が表明）（2011/11）
  • 完成できるのか次世代原子炉
    • 高速増殖炉「もんじゅ」試験運転見送り（2011/09）
• 原子力政策大綱の見直し
  • 安全神話崩壊、政策の基盤に逆風が
    • エネルギー政策見直し（14基の原発新増設見直し）（2011/03）→科技白書（科学技術の影）、通商白書（電力不足で産業の空洞化）、環境省提言（温暖化対策で原発増設前提見直し）（2011/07）→エネルギー白書（原発推進削除）（2011/11）
    • 原子力政策大綱の見直し（高速増殖炉開発と原発輸出）中断（2011/04）→見直し再開（原子力開発、核燃料サイクル）。「もんじゅ」試験運転見送り（2011/09）
  • 混乱する国際市場、原発推進の二極化
    • 新設停止、脱原発：イスラエル、初の原発建設計画中止（2011/03）、独、2022年迄に脱原発（2011/05）→伊、国民投票（賛成94%）で原発凍結（2011/06）→スイス、34年目標に脱原発（2011/09）
    • 積極推進：ＢＲＩＣｓ原発推進宣言（2011/04）→韓国、７４０億円（今後５年間）投じ原発の安全対策（2011/05）→サウジアラビア、2030年までに１６基計画。仏、原子炉開発に１１５０億円（推進堅持）（2011/06）→ＩＥＡ公表（世界の原子力発電、2035年に７割増）（2011/11）→韓国、２基新設許可（2011/12）

• 国内原発の危険度
  • 老朽化（稼動後３０年超）
    • 美浜（福井：39年）、福島第一（被災：36年）、敦賀（福井）、東海第二（茨城）、高浜（福井）、島根
  • ３０Ｋｍ圏内の人口（３０万人超）
    • 東海第二（茨城：93万人）、浜岡（静岡：75万人）、島根（45万人）、柏崎刈羽（新潟）
  • 活断層の可能性あり（2012/08）
    • 追加調査：大飯（福井）、志賀（石川）、敦賀（福井）、東通（青森）
    • 審査中：泊（北海道）、柏崎刈羽（新潟）
• 地域別に偏在する原発設置環境
  • ３県に原発の６割弱が集中
    • 福井県２４％、福島県１９％（廃炉含む）、新潟県１３％
  • ３地域に原発の８割弱が集中
    • 北陸地方４１％、東北地方２６％、九州地方１１％
• 原発の建設状況と建設費推移
  • １９７０年代からの２０年
    • 原発急増：７基から４７基と４０基増。年間平均２基の建設ラッシュ
    • 建設単価も急騰：１基当り約８倍（410→3250億円）に。単位出力（万Kw）当り約４倍強（8→34億円）に
    • ２度の石油危機：高度経済成長→石油危機（1973年、1979年）→バブル崩壊（1986〜1991年）
    • 海外の原発事故（国内の安全神話）：米国スリーマイル原発事故（1979年）。ソ連チェルノブイリ原発事故（1986年）
  • １９９０年代からの２０年
    • 原発微増：４７基から５４基と７基増。３年で１基とスローダウン
    • 建設単価も低迷：１基当り数％増（3250→3410億円）に。単位出力（万Kw）当り約２割減（34→28億円）に
    • 経済停滞と再生の一手：失われた１０年（1990〜2000年）→穏かな回復→原子力立国計画の策定（2006年）→リーマンショック（2008年）
    • 警鐘と直撃の国内原子力事故：東海再処理工場（茨城）、火災・爆発事故（1997年）。ＪＯＣウラン加工工場（茨城）の臨界事故（1999年）。中越沖地震で柏崎刈羽原発が被災（2007年）。東日本大震災で福島原発が被災（2011年）

◆語句説明・出典

○語句説明

☆☆　ひと休み　☆☆

＜ある春　（健康散歩）＞

○出典

• 経済産業省：
  エネルギー基本計画（2010年）　　エネルギー白書（2008〜2010）
  
• 総務省統計局：
  世界の統計２０１２、２００８　　日本の統計２０１２　　日本統計年鑑平成２４年
  
• その他：
  （社）日本原子力産業協会；世界の原子力発電開発の現状（2011年）
  電気事業連；受電設備と発電電力量（2008年〜2010年）
  各電力会社のホームページ
  毎日新聞特集（2012/05/05）