昨今の異常気象や継続する地球温暖化の影響などで、豪雨災害が各地で頻発、その被害も甚大となっています。
大規模豪雨災害(その被害)は、戦後の経済復興とインフラ整備の進展で、急速に減少しましたが、近年になって復活の兆しも出てきました。注意が必要な状況です。
我が国のおよそ130年間に及ぶ、気象庁の降雨量の記録から、豪雨災害の原因となる「年間降雨量と豪雨日数」の時系列的な推移とその関係について調べてみました。
近い将来、日本の降水量や豪雨日数は増加するのだろうか。
我が国の年間降雨量は、全国51個所の気象台(気象庁は年間降水量偏差で使用)の平均値としました。また、年間豪雨日数については、時間50mm以上の降雨量(参照)があった日の年間の日数としました。
両指標のグラフは図1の通り、およそ130年の間、最大値と最小値の間で増減を繰り返しながら変化しているため、将来の予測がなかなか難しい状況です。
そこで傾向をみるために直線近似の予測線を付与し、相関係数で予測可否を調べました。結果、(1)降雨量は相関係数の絶対値が小さいため相関は無く(予測不能)、(2)豪雨日数は正の相関(増加傾向)がありました。
このことより、日本の降雨量と豪雨日数は、今後とも増減を繰り返しながら変化して、傾向としての基調は、前者に関しては不明、後者については増加となりました。
各地方の地域別の降雨指標を、図3に示しましたが、降雨量(参照)や豪雨日数に関しては、前述の全国と同様その傾向をつかむのは、なかなか難しいものがあります。
我が国の平均値としては、前述の通り、将来の降雨量に関しては予測不能、豪雨日数に関しては増加傾向となっています。
同様の手法で、時系列と各降雨指標の実績値より将来予測を行い、その予測精度に関わる相関係数を、表2に整理しました。
降雨量に関しては、東北、東海、甲信の各地方に負の相関関係、すなわち、将来的に減少傾向の予測があり、他の地方に関しては予測不能となりました。
豪雨日数については、全国平均、北海道、北陸、中国、九州の各地方で増加傾向の予測となり、他の地方は予測不能となりました。
地域名 | 相関係数 | |
---|---|---|
降雨量 | 豪雨日数 | |
全国平均 | -0.21 | 0.5 |
北海道 | 0.29 | 0.68 |
東北 | -0.49 | 0.27 |
関東 | -0.39 | 0.14 |
東海 | -0.46 | -0.19 |
甲信 | -0.47 | 0.07 |
北陸 | 0.14 | 0.59 |
近畿 | -0.3 | 0.18 |
中国 | 0.33 | 0.71 |
四国 | -0.13 | 0.11 |
九州(沖縄含む) | 0.02 | 0.62 |
☆130年間の10年単位の年平均より算出。豪雨日数は50mm/h以上の年間降雨日数。 ☆相関係数は、0.4i以上は正の相関あり、0.7以上は強い正の相関あり、絶対値0.2未満は相関無し、−は負の相関。 |
ここでは、地域や地方の降雨指標分析を都道府県ベースで概観しました。多量となるので、上位下位等代表的な事例に絞って記載しました。
最上位の鹿児島県と最下位の北海道に、数件の事例を含めて、降雨量の推移を掲載しました。
我が国では、地域によって年間降雨量がおよそ3倍も異なり、期間的な増減の高低差も大きな違いがあることがわかります。
異常気象や豪雨、そして災害関連の最新情報(2015年以降)を、参考として以下に記載します。
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降雨指標間の関係から、全国各地域の特徴を、分布図として図2に示しました。降雨量の多寡、豪雨の発生数の多少より、各地の気象面の違いが見えてきました。
両軸を3分類して、(1)多雨・豪雨頻発地域の九州、(2)少雨・豪雨散発地域の東北・甲信・北海道、(3)中間地域の全国平均含む四国・東海・中国・近畿・関東、そして、(4)多雨・豪雨中間地域の北陸と分別整理できそうです。
また、図2から北陸を除くと、各地域が降雨量と豪雨日数の間で、直線状に並んでいるのがわかります。降雨量と豪雨日数の間には、どうやら正の相関関係がありそうです。
そしてまた、図2の円の大きさは、各地の将来の豪雨日数の増加を予測したものです。相関係数が0.4を越えるものは正の相関関係があり、0.7を越えると強い相関関係となります。
正の相関は将来の増加を示すことになり、九州・北陸・中国・北海道・日本(全国平均)の豪雨日数は、今後とも増加基調となりそうなので、豪雨災害にはこの先更に注意が必要となりそうです。
<一景 (東京 旧綾瀬川)>
前述の図2の説明でも触れましたが、降雨量と豪雨日数の間には、正の相関関係が存在するようです。豪雨日数が増加すれば、降雨量も増え、降雨量が増えれば、豪雨日数も増加しているという関係になります。
各地の過去のデータより、表1のような相関関係があることがわかりました。東海・北陸・中国・四国・九州は、特に強い相関関係が出ています。
地域名 | 相関係数 |
---|---|
全国平均 | 0.63 |
北海道 | 0.68 |
東北 | 0.57 |
関東 | 0.61 |
東海 | 0.73 |
甲信 | 0.68 |
北陸 | 0.75 |
近畿 | 0.76 |
中国 | 0.70 |
四国 | 0.89 |
九州(沖縄含む) | 0.72 |
☆データは、130年間の10年単位の年平均より算出。豪雨日数は時間50mm以上の年間降雨日数。 ☆相関係数は、0.4i以上は正の相関あり、0.7以上は強い正の相関あり |
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同様に豪雨日数も、最上位の高知県と最下位の北海道に、数件の事例を含めて、その推移を記載しました。
上位と下位でおよそ10倍程度の豪雨日数の差異があり、期間を通じた増減変動の高低差も大きく異なり、地域による大きな格差が存在します。
<秘湯 堪能 (秋田 黒湯温泉)>
長期にわたる過去のデータから、降雨指標の年平均値を算出して、表3に都道府県別順位表を作成しました。それぞれ上位5件、下位5件と地域別に参考数件を含めて順位表としました。
結果は、「図2降雨指標の地域別分布」の上位地区、下位地区から選択された、該当地域の都道府県が、ほぼぞれぞれの上位、下位として登場することになりました。
都道府県 | 降水量 (mm) |
都道府県 | 豪雨日数 (日) |
---|---|---|---|
鹿児島 | 2662 | 高知 | 14.3 |
高知 | 2651 | 宮崎 | 12.5 |
宮崎 | 2541 | 鹿児島 | 12.2 |
福井 | 2337 | 沖縄 | 9.4 |
富山 | 2269 | 長崎 | 8.4 |
大阪 | 1653 | 東京 | 5.2 |
愛知 | 1592 | 愛知 | 5.1 |
東京 | 1541 | 広島 | 4.7 |
広島 | 1406 | 大阪 | 4.1 |
山梨 | 1181 | 香川 | 2.7 |
福島 | 1169 | 長野 | 2.6 |
香川 | 1134 | 福島 | 2.5 |
宮城 | 1103 | 山形 | 1.6 |
北海道 | 1042 | 北海道 | 1.5 |
☆全国51ヶ所の気象台の降雨指標の年平均値(期間130年)を使用 ☆複数気象台は合算平均値を地区数値とした ☆降雨量と豪雨日数の上位下位5件と参考地区数件を含めて順位表とした |
「気象観測データ」、「気象の過去の災害」、「日本の年降水量(気象台51地点)」
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