この5年間の環境変化 有限な資源 2 (2007/10)

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2007 08 日本参加の油田開発中止 環境法令違反でカザフスタン
     カザフスタンのイスカコフ環境相は27日、世界有数の巨大油田とされ、日本の国際石油開発が約8%の権益を持つカスピ海のカシャガン油田について、開発企業が環境法令に違反したとして、開発が3カ月間中止されると発表した。カスピ海では最近、アザラシの大量死が相次いでおり、ロシア当局は同油田の開発企業による汚染が原因と指摘している。カザフの対応については、ロシアにならって資源の国家管理強化に乗り出したとの見方もある。
2007 08 丸紅、ペルーでLNG生産・権益10%取得へ
     丸紅はペルーで液化天然ガス(LNG)の生産事業に参加する。米国、スペイン、韓国の資源開発会社が推進する総事業費38億ドル(約4400億円)のプロジェクトで、権益10%を韓国社から取得する。資源獲得競争と環境問題を背景にLNGの需要は世界的に高まっており、日本の電力・ガス会社への安定供給を視野に調達先を拡大する。
2007 08 ロシア潜水艇、北極点の海底に国旗・「北極海はロシア領」
     ロシアの有人潜水艇が2日、北極点の深さ約4200メートル強の海底に到達、チタン製のロシア国旗をロボットアームを使って立てた。同海底に埋蔵されているとされる石油・ガス、金など地下資源の所有権獲得を狙っているとみられる。ラブロフ外相は同日「我々の大陸棚が北極海海底まで続いていることが証明された」と発言。

 有人潜水艇が北極点の海底に潜るのは世界初。潜水艇2隻は海底に到達後、研究用の土砂を採取した。ロシアが北極海海底の占有権を得るには国連海洋法条約に基づき陸地と地続きの大陸棚であることを証明し、国連で承認されることが必要となる。ロシアは2001年に承認申請を却下されている。今回の調査後、09年に再度国連に申請する予定という。

 米国、カナダ、ノルウェーなども北極海で自国の大陸棚拡張を目指している。米国務省副報道官は2日「今回の調査はロシアの主張に法的根拠を与えるものではない」と述べ、ロシアによる資源確保を認めない考えを強調した。
2007 07 JOGMEC、米メキシコ湾での探鉱事業に出資
     石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)は20日、三井物産子会社の三井石油開発が15%権益を取得した米国メキシコ湾の探鉱事業に75%出資すると発表した。出資額は2010年までに86億4400万円を見込む。JOGMECが国内開発会社の海外事業への出資制度を設けてから、2件目の案件になる。

 三井石開は6月末、英BPから同鉱区の権益を取得した。現地に設立した事業会社にJOGMECが出資する。議決権比率は三井石開51%、JOGMEC49%。同鉱区では地下8000メートルの深部を9月から試掘する予定。
2007 03 アンゴラ、6年で6兆円投資 石油など開発相次ぐ リビアは官僚組織に懸念
     アフリカ南西部のアンゴラで内戦終結による治安の安定化を受けて同国の石油産業への開発投資が今後6年で6兆円規模に達する見通しだ。アフリカでは国連の制裁が解除されたリビアでも資源開発が拡大している。両国では官僚組織の非効率や政情問題が海外企業の投資に向けた懸念材料になっている。

 ○政情不安続く:アンゴラの国営石油会社、ソナンゴルのビセント会長は、同国の石油・天然ガス開発、インフラ整備、保守修繕サービス、環境対策などへの投資総額が6年間で500億ドル(約5兆8500億円)に上るとの見通しを示した。同国では最近、深海地域で商業生産可能な油田の発見が相次ぎ、海外企業の注目を集めている。国際石油資本(メジャー)の米シェブロンやエクソンモービル、仏トタルなどとともに、エネルギー外交を展開する中国の国営石油会社も権益取得を進めている。

 アンゴラは27年も続いた内戦が02年に終結。アフリカのサハラ砂漠以南でナイジェリアに次ぐ第2位の産油国に成長。07年1月には石油輸出国機構(OPEC)にも加盟した。05年の石油生産量は日量約123万バレルで、政府は08年までに同200万バレルに引き上げる計画だ。報道によるとビセント会長は「石油産業の成長はアンゴラの経済拡大を増幅させる」と述べ、高止まりするエネルギー資源を武器に貧困国から脱却する考えだ。しかし、ロイター通信によると、政府の政権運営に最大野党のアンゴラ全面独立民族同盟(UNITA)が不満を募らせ武力行使を示唆するなど内戦終結後も不安定な状況が続いている。海外企業も政情不安が顕在化すれば投資を手控えることが予想される。

 ○海外企業を警戒:03年に国連制裁が解除されたリビアでは石油生産を現在の日量160万バレルから10年までに200万バレルに引き上げる計画だが、専門家は老朽化した設備や巨大な官僚組織が生産量引き上げの妨げになるとみている。最高指導者のカダフィ大佐は「資源を狙う海外企業に警戒しなければいけない」と述べ、資源開発の主導権は外国企業に譲らない姿勢を示している。リビアでは05年に実施した油田、ガス田の公開入札で約40年ぶりに米国などの海外企業が事業権を獲得。これまでに3回行われた入札で、日本の国際石油開発、新日本石油、ロシア、インド、中国などからの開発投資が決まっている。
2007 03 アフリカ投資:中印で急増 エネルギー需要に対対応
     国連貿易開発会議(UNCTAD)は27日、経済成長に伴うエネルギー需要を満たす必要に迫られている中国やインドの対アフリカ投資が急増しているとの報告書を公表した。日本と中東を除くアジア各国・地域からのアフリカ向け対外直接投資についてまとめた。報告書によると、04年までの投資総額が最も多いのはシンガポールで35億ドル。従来はシンガポールのほか韓国、香港、台湾などが主だったが、インドと中国がここ数年、投資を急増させている。インドは04年までの投資総額がシンガポールに次ぐ2位の20億ドルだった。中国は05年までの総額が16億ドルに達したという。

 中国の対アフリカ投資は03年まで年間1億ドル以下だったが、04年に3億ドル超、05年には約4億ドルに増加した。最大投資先は産油国・スーダン。中国は同国で油田開発を進めており、90年にほぼゼロだった同国への投資総額が05年には約3億5000万ドルに急増した。
2007 03 資源保有国を4分類、安定確保目指し指針案
     政府が原油などエネルギーの安定的な確保を目指して策定する「資源確保指針」の原案が10日、明らかになった。産油国などを資源開発の発展段階別に4分類し、それぞれ対応策を示している。中国の急成長などでエネルギー需給が逼迫し、世界的な資源争奪戦が厳しさを増す中で、きめ細かいエネルギー外交を展開し、安定確保を図る狙いがある。

 指針原案は、産油国などの資源保有国を、「開発途上国(リビアやアンゴラ、ナイジェリア、外資に友好・競争激化)」「成長途上国(ロシアやベネズエラ、資源の国家管理)」「安定国(サウジアラビアやクウェート、アラブ首長国連邦など、資源は既に国有化、枯渇の不安)」「潜在的資源国(イラクなど)」に4分類して特徴を分析し、日本がとるべき対応策を示した。
2006 12 15年までに「ゼロ」になる可能性と、イラン原油輸出収入
     米国科学アカデミー紀要は25日、イランの原油輸出収入が減少の基調にあり、現在のペースが改善されなければ2015年までに全額が消える可能性があるとの論文を発表した。これによると、イランは現在、原油輸出で年間約500億ドル(約5兆9500億円)の外貨などを稼いでいる。新たな油田発掘などで外資の導入を嫌っていることや国内投資も遅滞していることなどが主因としている。管理体制のぜい弱さも一因としている。

 何らかの対抗策を打ち出さなければ、今後5年以内に輸出量は半減になる可能性があるとしている。イランの原油生産量は現在、日量約370万バレル。石油輸出国機構(OPEC)の割当量より約30万バレル少ない水準。イランの国家予算における原油輸出収益の割合は大きく、2004年には約65%となっている。

 イランは核開発をめぐって欧米と対立、国連安保理は先に、ウラン濃縮続行などで制裁決議も採択した。同誌の地理学者は、原油輸出減などの現状を踏まえれば、核開発は民生利用と主張するイランの立場に一理あるかもしれないとも説明している。
2006 11 [中国外交]「資源確保の思惑が露骨に見える」
     中国がアジア、アフリカへの外交攻勢を強めている。とりわけこの1か月は、外交パワーの大半を両地域に集中させた観さえある。国際政治における主導権の獲得と天然資源の確保という中国の意図が、一層、鮮明になってきた。

 ASEANとの首脳会議では、軍事交流など安全保障面の枠組み作りを呼びかけた。域内の格差解消などのため巨額の資金援助も表明した。ベトナムとは海底油田の共同開発で合意した。アフリカ諸国とは中国による援助倍増や基金設立が決まった。協力強化策は資源とエネルギー分野に集中させる。

 援助を武器に天然資源の確保に走る戦略は、アフリカで特に際だつ。昨年の中国の対外援助の半分以上をアフリカが占める。アフリカからの石油輸入は全輸入量の3割を超えた。中国は、相手国の独裁や人権弾圧など内政には一切口を出さない。そうした援助策が今は効果をあげている。

 日本は、アジア、アフリカに対し長年援助国として実績を積み重ねてきた。中国の動きは日本の地歩を崩しかねない。実際、日本の国連安保理常任理事国入りは、中国がアジア、アフリカ諸国に「反対」を働きかけ、阻まれた。一方で、無原則な援助外交を展開する中国への批判が、先進国を中心に高まっている。利益優先の“資源あさり”を続ければ、被援助国内から反発が出る可能性もある。中国が、このままの外交路線を続けられるとは限らない。
2006 07 アフリカに融資攻勢 批判高まる 「逆行資源外交」
     世界の資源獲得に躍起になっている中国が、ザンビアやガーナなどの重債務国を含むアフリカ諸国に対して融資攻勢をかけている。インフラ整備と融資、それに石油などの資源獲得を一体化させる狙いだ。アフリカ諸国に対しては、パリクラブ(主要債権国会議)を中心に債務が積みあがるのを控える方向にあるだけに、国際機関の関係者らは、中国の逆行する資源外交に批判を強めている。

 中国が国内の拡大するエネルギー需要を賄うため、石油を中心とする資源の確保の一環として、主要国から公的債務の免除を受けたアフリカ諸国に対して、安易な融資攻勢に走る事例が目立っているからだった。G8が問題視するのは、中国が安易な融資に走れば、債務免除の条件に貧困からの脱却と民主化、経済改革を挙げる先進国の狙いが崩れてしまうからだ。2005年に国際通貨基金(IMF)はアンゴラに対して石油収入を透明にしなければ融資をやめると通告したが、中国が20億ドルの融資に応じたため、アンゴラはIMFの要求に背を向けるようになった。

 中国は、国際社会がダルフールでの虐殺を非難するスーダンに投資し、石油を中心とした輸出の70%を引き受けているだけでなく、武器輸出にも積極的だ。腐敗政権として批判されているジンバブエのムガベ大統領も中国からの投資や融資で政権を維持している。ザンビアではすでに、希少資源であるプラチナの確保のために1億7000万ドルを鉱山開発に投資し、数万人規模の中国人労働者を移住させている。

 ガーナやザンビアなどは、G8が05年に、債務免除の方針を打ち出した重債務国の国々だが、中国の最大の狙いは、開発援助を通じた関係強化と資源の確保にある。中国はいまやアフリカ最大の投資・援助国。貿易額でも米国、英国に次ぐ第3位だ。IMF幹部は、「先進国は、途上国の債務が積みあがるのを控える方向に動いているのに、中国は、先進国が債務免除しているところに対して、融資攻勢をかけている。中国はパリクラブのメンバーではないから、制約なく融資できる。政治的に無関心を装う中国の姿勢は問題で、大国としての責任ある行動を取るべきだ」と批判を強めている。
2006 05 [南米産油国]「資源国有化で広がる市場の懸念」
     高値で推移する国際石油市場の行方に、新たな懸念材料が加わっている。南米で広がる、石油・天然ガス資源を国有化する動きだ。国際的な資源調達競争に、どう影響してくるのか。日本としても、注視する必要がある。

 ボリビアでは5月1日、モラレス大統領が、石油・天然ガス産業の国有化を宣言した。昨年暮れの選挙で、貧困層を支持基盤に当選した先住民出身の大統領は国有化を公約に掲げていた。ボリビア政府は昨年、大規模ガス田での政府の取り分を18%から50%へ引き上げた。今回の国有化宣言で、82%への大幅アップを通告した。外国企業には、半年の期限を突きつけ、新しい条件をのめない場合は撤退するよう迫っている。

 ベネズエラ(世界第5位の石油輸出)のチャベス大統領は、外国石油企業に政府が過半数の権益を確保できるようにし、過去に遡及して所得税を引き上げるなど、国家管理を強化している先例も。

 国有化は、短期的には資源国に巨額の歳入増をもたらす。だが、その副作用は大きい。資本力や技術力を有する外国企業が逃避すれば、中長期的には、開発は進まず、生産性も低下するだけだ。エクアドルの場合、最大の貿易相手国である米国が、米企業の資産を接収する決定に不満の意を表明し、自由貿易協定(FTA)交渉はストップした。ボリビアでは、ブラジルや西欧諸国の進出企業が、新規投資を手控えている。
2006 02 エネルギー戦略 日米欧各国が抜本的な見直しへ
     日米欧各国などがエネルギー戦略の抜本的な見直しに乗り出している。中国やインドなどアジアの急成長に伴い世界的にエネルギー需要が増大していることに加え、ロシアなど供給国によるエネルギーの国家管理強化で、需給両面から構造変化が生じているためだ。省エネ強化やエネルギー供給源の多様化などが柱で、経済産業省も5月に策定する予定の新・国家エネルギー戦略で、石油依存度を引き下げる数値目標を明示する方向で検討している。

  世界のエネルギー需要は、石油危機前の71年には石油換算で約55億トンだったが、02年には約103億トンと倍増。原油の輸出国だった中国が急激な経済成長で純輸入国になるなどアジア諸国の需要増が続いているためで、30年には約165億トンに上る見込みだ。

  一方、供給面では今世紀前半にも石油生産がピークを迎えるとされる中、ロシアは国営企業を中心に資源産業を再編。中東各国政府による投資への関与も強まるなど、主要産油国の間でエネルギーの国家管理を強化する動きが続いている。   また、東シナ海では日本の反発にもかかわらず中国がガス田開発を強行するなど資源獲得をめぐる国際的な紛争も起きており、大消費国としてエネルギーの安定確保に動かざるを得ない(経産省幹部)状況になっている。

  日本のエネルギー政策は70年代の2度にわたる石油危機を受けて、原油輸入の中東依存度を低下させることに主眼が置かれてきた。しかし、石油危機後にいったん下がった中東依存度は中国などからの輸入が減ったため05年で再び9割を突破、中東依存度の引き下げはなかなか難しくなっているのが実態だ。   このため、5月に打ち出す新戦略では世界の厳しい需給構造を見据え、石油への依存そのものの低減や省エネ推進の強化を柱に位置付ける。具体的には、全エネルギー需要に占める石油依存度を現在の約50%から、30年には40%未満に引き下げる目標を掲げる見通し。

  米国は昨年8月、エネルギー自給率向上を柱にした包括エネルギー法が成立。今月に入り約30年ぶりの政策転換となる使用済み核燃料の再処理を再開する方針を打ち出した。欧州連合(EU)も昨年6月、20年までにエネルギー消費を2割抑制する新戦略を発表した。中国も来月、第11次5カ年計画を策定し、20年までの省エネ目標数値を掲げる見通しだ。
2005 09 世界のOPEC依存度、2010年以降増大する見通し=IEA
     国際エネルギー機関(IEA)は、2010年直後に石油輸出国機構(OPEC)以外の産油国による産油量が限界に達し、OPECに対する世界の石油依存度が増大すると予想している。IEAは、特に中東と北アフリカのOPEC加盟国(サウジアラビア、イラン、イラク、クウェート、アラブ首長国連邦など)が世界の原油生産に貢献していくとみている。原油需要の増加に加えて、非OPEC産油国の原油埋蔵量が乏しい一方、主要なOPEC加盟国は低価格の原油を豊富に埋蔵していることが主たる要因だと述べた。

 IEAのマンディル事務局長は、仏ルモンド紙に対し、ノルウェー、メキシコ、ロシア、米国をはじめとする非OPEC産油国による産油量は世界の供給の60%程度を占めるが、2010年直後に減少する可能性があると指摘していた。
2005 01 輸入原油、中東産が88・9%…1973年以降最高に
     経済産業省・資源エネルギー庁が31日発表した2004年の石油統計(速報)によると、昨年1年間に輸入した原油(2億4339万キロ・リットル)に占める中東産の割合は88・9%となり、中東依存度は暦年ベースで第1次石油危機(1973年)以降で最も高くなった。

 経産省は自国での消費が拡大している中国、インドネシアからの輸入量が減ったことなどが要因と分析している。国別の依存度は、アラブ首長国連邦(25・3%)、サウジアラビア(24・5%)、イラン(15・0%)などとなっている。

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2007 08 水素ステーション大阪市内に開所
     大阪ガスが経済産業省の水素・燃料電池実証試験を受託し、運営する水素供給ステーションが23日午前、大阪市中央区の大阪府所有地にオープンした。平成22年度までの試験期間中、水素と酸素の化学反応で発電する燃料電池を動力源にした自動車(FCV)や、車いす、カートなどに水素を供給し、運用データなどを収集する。
2007 08 三菱商事、バイオエタノール製造に参入・北海道での事業に出資
     三菱商事はバイオエタノールの製造事業に参入する。JAグループ北海道が十勝地区で進めている国内最大級のバイオエタノール製造事業に参加する。
2007 08 バイオガソリンに税優遇・政府検討
     政府は植物から精製するバイオ燃料の普及を促すため、ガソリン税(揮発油税・地方道路税)を減免する検討に入った。バイオ燃料を混ぜた「混合ガソリン」が対象で来年度にも導入する。バイオ燃料は地球温暖化を抑制できるが原油に比べコストが高い。混合ガソリンの税負担を減らすことで小売価格を下げ利用を促す。日本は京都議定書の目標達成が難しくなっており、運輸部門の温暖化対策を拡充する。
2007 08 パーム油をバイオ燃料に、政府がマレーシアに技術協力へ
     政府は16日、地球温暖化対策の一環として、マレーシア政府に対し温室効果ガスの削減につながるバイオ燃料生産の技術協力をする方針を決めた。アブラヤシを原料とする植物油「パーム油」をバイオ燃料に転換する技術開発の協力を2008年度にも開始する。

 マレーシアはバイオ燃料の原料となるパーム油の世界有数の生産地で、生産量は世界全体の約45%を占める。日本の技術協力はバイオ燃料の高度な生産技術を持つ、経済産業省所管の独立行政法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」が中心になって行う。
2007 06 米国の太陽光発電、2010年までに日本に並ぶ=シャープ米現法
     シャープ米国現地法人は、米国のソーラーシステムによる発電量について、2010年までに世界第2位である日本と並び、その後すぐに1位のドイツを追い抜く可能性があるとの見解を示した。ドイツと日本は、数年間にわたってソーラーシステムによる発電量で上位を占めていた。国内のエネルギー資源が十分でないことを認識している両国政府は、再生可能エネルギーの利用を奨励してきた。

 一方、米国では、連邦政府レベルで再生可能エネルギーの利用が奨励され始めたほか、多くの州では、様々な要因によって太陽光発電の利用が拡大する可能性がある。米国の人口は全世界の人口の3%に当たるが、米国民は全世界の電力の約25%を使用している。
2007 06 農水省、バイオ燃料増産後押しで新法制定へ
     農林水産省は、国産のバイオエタノールなどの生産を支援するため、新法の策定に乗り出す。バイオ燃料の製造工場を農業用地に建てられるよう規制緩和したり、流通価格を下げるため揮発油税に相当する額の補助金を製造業者に支給したりするのが柱だ。

 政府は地球温暖化防止に向け、バイオ燃料の生産量を国内のガソリン消費量の約1割に高める計画で、諸外国に比べ立ち遅れていた優遇策を整備する。新法案は「国産バイオ燃料事業法案(仮称)」で、農水省は近く検討室を設けて関係省庁と詳細を詰めたうえで、来年の通常国会に法案を提出する。

 政府は、温暖化対策のほか、エネルギー安全保障の観点からもバイオ燃料の安定供給が必要として国産燃料の増産計画を立てている。11年までにサトウキビなどから年間5万キロ・リットルを生産し、さらに、稲わらや木材などの廃棄物を原料にした生産技術を実用化することで、30年までに国内のガソリン消費量の約1割に相当する年間600万キロ・リットルを生産するとしている。
2007 06 三菱商事やキリン、北海道でバイオ燃料プラント受注
     三菱商事とキリンビールは19日、北海道・十勝地区のバイオエタノール実証プロジェクトで、エタノール製造施設の建設を受注したと発表した。受注額は約60億円で、2009年3月の稼働を目指す。地元農協など事業者がてん菜や小麦などをもとにエタノールを製造。石油製品と合成する「ETBE」の原料として販売される見込み。
2006 10 次世代の新燃料GTLの実用化めざす 新日本石油など
     次世代の新液体燃料と期待されるGTL(ガス・ツー・リキッド)の実用化に向け、新日本石油、石油資源開発など石油関連6社が4日、共同研究を始める、と発表した。GTLは天然ガスが原料で、環境への負荷が石油より少ないのが特徴。海外では欧米メジャーなどが既に生産施設を造っているが、6社は国産でより低コストに生産できる態勢をめざす。

 ほかに参加するのは、国際石油開発、コスモ石油、新日鉄エンジニアリング、千代田化工建設。研究期間は06〜10年度までの5年間で、新潟県内に実証研究施設を造る。研究費用は、6社が総額120億円、旧石油公団時代から研究を続ける石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が同240億円を出す。
2006 05 可能性と課題を秘めるエタノール燃料
     サトウキビやトウモロコシなど植物からつくるエタノールを輸送用燃料として利用する動きが急展開し始めた。政府はエタノール利用促進のための税制優遇や開発事業への支援を検討。石油連盟は「2010年度にエタノールを石油系物質と合成し、ETBE(エチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)として36万キロリットル(石油換算21万キロリットル)利用する」方針を打ち出した。

 今、エタノールへの関心が高まっている理由は2つある。第1は、原油の価格高騰と供給不足への不安だ。第2の理由は、二酸化炭素の排出削減である。エタノールには大きな利点と可能性があり、既に欧米やブラジルでは広く利用されている実績もある。日本も前向きに取り組む時期を迎えている。現状では高コストで、供給力も小さいが、日本の農業にとって新しい可能性にもなる。
2005 07 風力発電、導入支援へ 目標達成難しい状況でエネ庁
     太陽光やバイオマスと並ぶ新エネルギーの3大分野の一つである風力発電について、2010年度の導入目標達成が極めて難しい状況にあることが、経済産業省総合資源エネルギー調査会の小委員会のまとめでわかった。何も対策を講じないと、ほぼ半分までしか到達できない。風の強弱に伴って出力が変動することが妨げとなっており、同省資源エネルギー庁は出力変動を食い止める蓄電池との組み合わせなど支援策を新年度から進める方針を固めた。

 風力発電は、二酸化炭素削減など温暖化対策が期待されるクリーンなエネルギーだ。同庁新エネルギー対策課によると、国内導入量は04年度末現在で約93万キロワット。このほか電力会社が風力発電事業者と約49万キロワット分の契約をすでに結び、さらに10年度までに24万キロワット分の契約を見込んでいる。合わせると、10年度時点での風力発電容量は約166万キロワットとなるが、国が新エネルギーの導入目標とする300万キロワット(原発3基分程度)にははるかに及ばない。同課は年間20万キロワット程度ずつ増やさないと、目標に到達しない。早急に取り組む必要があるとしている。

 〈電力各社の導入状況〉 資源エネルギー庁の調べによると、04年度末時点の各電力会社の風力発電導入量は、東北電力がもっとも多く約37万キロワット。続いて九州、北海道と続き、四国電力は2.3万キロワット、中国電力は1.7万キロワット、関西電力は8000キロワットと出遅れている。ただ、10年度までの導入見込みは、関西、中国、四国とも現在の4倍程度を見込む。風力発電の比重が大きくなると、出力変動の影響を受けやすい。このため、北海道電力、東北電力では導入の制限を始めた。四国、九州でも同様に、導入制限を検討している。
2004 06 超クリーンエネルギー 水素社会近づく
     環境への影響が少ないクリーンなエネルギーとして、水素が脚光を浴びている。現在、国内外の学者が、水素を単体で取り出す方法の開発や、水素を使った電池の実用化などにしのぎを削り、国も研究を支援。水素による発電で家庭の照明や給湯をまかない、車が水素ステーションに立ち寄る水素社会は近づいているのだろうか。

 環境負荷ゼロ:空き缶などの廃アルミとカセイソーダ、水を入れて稼働させると筒から水素が発生し炎が上がる。副産物の水酸化アルミは、工業用原料として再利用される。

 多彩な原料:水素の利用にはいくつかのメリットがある。原料は、石炭、石油、天然ガスのほか、水やアルミ、さらに農産物や農業廃棄物、間伐材などのバイオマス資源など多彩。このためエネルギーの多様化という観点からも望ましいという。水素からエネルギーを取り出す原理は水の電気分解の逆。水素と酸素を反応させ、電気を発生させる。残るのは水だけ。

 各国の熱い視線を浴びる日本の水素研究。コスト削減という課題は残るが、国内では実用化の動きも出始めている。大阪ガスは、家庭用燃料電池を来年度中に商品化し発売する予定。資源エネルギー庁は、燃料電池車を平成四十二年には新車の二割にあたる千五百万台にする目標を掲げている。
2002 08 バイオエネルギー:CO2削減へ普及がカギ 資源有効利用で具体策必要
     資源有効利用と環境問題解決のためにバイオエネルギーを利用する動きが、今年に入って激しくなってきた。政府が京都議定書を批准し、二酸化炭素(CO2)の排出削減に向けて再生可能エネルギーが注目されていることに加え、各種リサイクル法に対応するためだ。

 バイオエネルギーは、再生可能エネルギーの主役ともいえる。EU(欧州連合)では、九五年時点で再生可能エネルギーの六一%をバイオエネルギーが占める。これは、総エネルギーの三%に相当する。さらに二〇一〇年までに、約三倍の九%に増加させる計画だ。これが実現すれば、バイオエネルギーは、再生可能エネルギーの約七五%に達する計算だ。

 一方、日本では二〇一〇年までに再生可能エネルギーのほかに廃棄物発電などを含む新エネルギーの普及率を、現在の一%から三%に引き上げることを掲げている。そのための政策は、風力や廃棄物発電の普及促進が主体であった。 これに対して今年六月、バイオエネルギー普及のための新たな方針が打ち出された。農林水産省を中心に環境省や経済産業省などの連携による「バイオマス・ニッポン総合戦略」である。

 同戦略は、資源循環型社会システムの構築や地球温暖化対策のためにバイオマスを利用するほか、生分解性素材や飼肥料にもバイオマスを活用することなどが骨子となる。それらを推進するため、規制緩和、融資・補助制度、技術開発支援などを検討する。

 現在、バイオマス発電によって得られる電力は、ほかの再生可能エネルギーに比べて買取価格が低い。太陽光発電が一キロワットあたり約二十円、風力発電が同十二円程度であるのに対し、バイオマス発電は同三円程度にしかならない。

 これに対して総合戦略は、「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(RPS法)」を円滑に施行するため、バイオマス発電による電力が、風力などほかの新エネと同様に取り扱われるように検討する方針である。電力買取価格が風力などの新エネルギー並みになれば、農家のようなバイオマス排出者が単独でバイオエネルギー事業を実施しても十分に収益が上がる。総合戦略は、年内までに策定される。
2002 08 03年度概算要求:環境、新エネ普及に1618億円
     環境関連では、京都議定書の批准を受けて、温暖化対策を充実させた。まず、新エネルギーの普及促進を今年度当初予算比で一二%増の一千六百十八億五千万円に拡充、次世代型エネルギーの実用化を目指す。燃料電池と水素エネルギーの技術開発や実証研究の推進に同四六%増の三百二十一億八千万円、バイオマスの技術開発などに同九四%増の六十億円を盛り込んでいる。

 省エネルギー対策は、同四%増の一千三百六十五億二千万円を計上。省エネ技術開発の補助金支給を一本化して六十億円を盛り込むなど、予算の効率的運用にも気を配る。一方、クリーン開発メカニズム(CDM)や排出量取引など京都メカニズムの活用に向けて布石を打つため、「海外地球温暖化防止、国際エネルギー使用合理化対策」として十四億円を新規計上。企業が円滑にCDMを実施できる仕組み作りを後押しする。

 このほか、リサイクル施策の関連予算を同七一%増の三百十億円と大幅に拡大し、循環型社会の構築に向けた取り組みも強化する。

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2007 07 急騰の希少金属、代替品の14研究に助成金…国家戦略へ
     政府は13日午前、インジウムやタングステンなど希少金属(レアメタル)の代替材料を研究する産学連携のプロジェクト14件に対し、今年度から今後5年間、毎年2〜3億円の助成を決めた。レアメタルは情報技術(IT)や自動車産業などの国際競争力確保に不可欠な素材だが、中国など海外からの輸入に頼っている。安定供給に道筋をつけるため代替材料開発を各国に先駆けて政府主導の「国家戦略」と位置づけた。

 基礎研究に近い文科省の「元素戦略プロジェクト」では、〈1〉亜鉛に代わる表面処理技術の開発〈2〉自動車排出ガス浄化触媒における貴金属の大幅削減などが採択された。一方、経産省の「希少金属代替材料開発プロジェクト」は5年後の実用化を視野に入れており、インジウムとディスプロシウム、タングステンの三つのレアメタルが研究対象とされた。

 液晶パネルの透明電極に使われるインジウム、高性能磁石の原料となるディスプロシウムや、精密加工用の超硬工具に使われるタングステンも代替対策が必要とされる。ネオジムなどの「レアアース」は、ハイブリッド車や燃料電池車に不可欠の高性能モーターに使用されている。しかし、生産地は中国やロシア、南アフリカなどに偏在する場合が多い。レアアースやタングステンでは世界全体の生産量の約9割以上を中国が占める。
2007 07 中国の自動車販売好調、環境問題で存在感を強めるプラチナ(白金)
     中国の2006年度の年間自動車販売台数は米国に次ぐ世界第2位となる722万台でしたが、わずか5年間で3倍以上の成長を見せたことになります。

 このような中国の自動車需要の増加期待に大きな影響を受けているのがプラチナ(白金)です。しかし、2003年の触媒需要が初めて宝飾用需要を上回り、その後も年間平均およそ9%のペースで需要が増加した結果、今では自動車の触媒用としての消費率がプラチナ需要の最も大きなシェアを占めています。

 この需要増加を受けてプラチナ価格)は一貫して上昇し、今年に入ってからは2003年当時の2倍となる5,000円に達しただけでなく、上場来の高値を何度も更新しています。なお、プラチナ価格がこのように急激な上昇を遂げているのは需要の急増だけが理由ではありません。プラチナの主要産地は南アフリカ、ロシア、北米、その他となっているものの、南アフリカとロシアの占める割合が90%を越えるなど実質的には産地が2カ国に限られているほか、埋蔵量も銀の5分の1に過ぎず希少性が高いことも大きな理由となっています。

 温暖化対策のため排気ガスに対する規制も各国で強化される傾向が広がっています。排気ガスをクリーンにする他の触媒の開発が進められているとはいえ、今のところ、プラチナを使用した触媒に頼るしかないのが状況です。自動車触媒の原材料としてのプラチナはますます存在感を強めることになりそうです。
2007 06 政府、レアメタル確保に本腰 ODAで新鉱山、模索
     政府は11日、ハイブリッド車などの製造に不可欠な希少金属(レアメタル)について、石油やウランなどと並ぶ資源外交の柱の一つに位置付けて安定確保に乗り出すことを決めた。中国などの工業化に伴って世界的に需給が逼迫しており、調達難が懸念されていた。政府の途上国援助(ODA)など外交手段を駆使して民間企業の権益確保を全面的に後押しする。

 レアメタルの用途は、特殊鋼用の添加剤や超硬工具のほか、最近はハイブリッド車や燃料電池、液晶パネルなど日本企業が強みを持つハイテク分野で拡大。日本はコバルトやインジウムの国別消費量で1位、レアアースで2位と、多くの品目で世界有数の消費国だ。
2007 06 中国、企業のアフリカ投資を支援 50億ドル基金創設
     中国政府は26日、中国企業のアフリカ投資を支援する「中国アフリカ発展基金」を創設した。中国の政策銀行、国家開発銀行が当初10億ドルを出資し、最終的には総投資額は50億ドル(約6100億円)に達する見込みだ。中国はスーダンのダルフール紛争など人権問題を軽視していると非難されており、今回の基金もアフリカでの資源や市場確保を優先的に進めるものとして、批判を招く可能性が強い。

 中国は経済力を背景にした対アフリカ接近を強めており、援助規模を2009年までに06年の2倍に増加させるほか、10年までに中国とアフリカ諸国との貿易額を1000億ドルに引き上げる方針を表明するなど、アフリカで中国の存在感を強くアピールしている。
2007 06 モンゴルの資源争奪激化 日本も月内に官民合同協議会を開催
     モンゴルで事実上、凍結されていた鉱物資源開発プロジェクトが近く再開され、日本を含めた外資による争奪戦が激化する見通しとなった。モンゴル政府がこのほど、資源メジャー(国際資本)との間で銅・石炭鉱山の共同開発に合意した。これを契機に、中国、ロシアなども権益獲得競争に参戦。日本政府も月内にモンゴルとの官民合同協議会を立ち上げ、交渉を本格化する計画だ。

 モンゴル南部にある世界有数の未開発銅山であるオユトルゴイ鉱山の権益を持つ資源中堅の加アイバンホーマインズと鉄鉱石世界2位の英豪系リオティントはこのほど、権益の34%をモンゴル政府が取得し、30年間の採掘契約を結ぶことで合意した。開発は7月のモンゴル議会による承認を経て始動し、2009年に銅鉱脈の露天掘り、14年に地下採掘に着手する。

 モンゴルの資源開発は政府が国家管理を強めるなかで、数年間にわたり停止していた。06年に外資が参加する開発案件にモンゴル政府が参加する代わりに、外資に対する税制を優遇する条件を盛り込んだ改正鉱物資源法が施行された。オユトルゴイ鉱山は、同法を適用する初の案件となる。

 原料炭開発事業には、石炭輸送のためモンゴル南部と中国を結ぶ鉄道整備や発電所などのインフラ整備が欠かせず、日本側は上下水道や埋蔵量調査などの協力と合わせてモンゴルに提案する。ただ、ロシア、中国もモンゴルでの権益獲得に全力をあげている。
2006 11 ソマリア紛争、周辺国に拡大の懸念
     無政府状態が続く東アフリカのソマリアで、暫定政府とイスラム原理主義勢力「イスラム法廷」の和平協議が行き詰まりをみせたことで、エチオピアなど周辺国も巻き込んで紛争が拡大するとの懸念が出ている。米政府は対話再開を求めているが、米紙ワシントン・タイムズはこのほど、イスラム法廷と国際テロ組織アルカーイダの連携を指摘したほか、暫定政府が今後数週間のうちに敗北する危険にさらされていると報じた。

 同紙が現地情勢に詳しい米軍関係者の話として伝えたところによると、ソマリアではアルカーイダ幹部6人がイスラム法廷と連携しているほか、イスラム教シーア派組織ヒズボラ(神の党)も同様のイスラム法廷に協力している。イラン人もソマリア南部のウラン鉱床に注目し、滞在しているといわれているという。
2006 06 経産省、「資源戦略研究会報告書」を公表
     昨年12月に設置された資源戦略研究会は、レアメタルなどの非鉄金属資源の安定供給確保のための取り組みのあり方などを記した報告書をまとめた。レアメタルを含む非鉄金属は、過去数年間に国際受給のひっ迫や国際価格の高騰が起こっている。また、それらの消費量は世界的に拡大しており、中国では非鉄金属消費が急速に拡大。銅、ニッケルなどについては資源輸入国となり、日本との競合関係が生じる一方、レアメタルについては資源供給国として、重要性が増している。

 報告書では具体策として、(1)探鉱開発の推進、(2)リサイクルの推進、(3)代替材料の開発、(4)レアメタル備蓄、(5)その他の取り組み、が必要とした。偏在が著しいレアメタルの供給源多様化に向け、海外資源調査を推進するとした。
2005 08 [鉱物資源高騰]異常なのは原油だけではない
     経済産業省によると、値上がりが始まった2年前に比べ、今年3月現在でバナジウムは6・3倍、モリブデンは7・2倍、インジウムは8・2倍に上昇した。バナジウムは高張力鋼、モリブデンは自動車部品用鋼材、インジウムは液晶パネルに必須の貴重な金属だ。日本の製造業を支える基礎的な鉱物も原料炭が1・6倍、鉄鉱石が1・9倍、銅が2倍、鉛が2・2倍になった。

 価格高騰の背景には、中国の急激な需要増がある。大幅な反落は当分、期待できそうにない。希少金属(レアメタル)の国家備蓄制度を質量ともに拡充すべきだ。一部の金属で始まったリサイクルを他の金属に広げ、回収率も高めなければならない。

 オーストラリアやカナダ、ブラジルなどの大手資源会社は、企業の合併・買収(M&A)で世界の有力鉱山を手に入れた。原料炭では上位5社が世界全体の輸出量の58%を、鉄鉱石では3社が74%を、それぞれ支配する。寡占化が進む中で、中国の需要が急増した。今は資源会社の値上げ要求を拒めない極端な売り手市場が出現している。

 基礎的な鉱物については、日本の商社や鉄鋼、非鉄会社が海外の鉱山に投資しており、供給途絶の不安は少ない。心配なのは、資源が中国に偏在している一部の希少金属だ。超硬工具に使われるタングステンは国内消費量の87%、プラスチック添加剤となるアンチモンは89%、電子材料に欠かせない希土類は91%を中国からの輸入に依存している。

 希土類とタングステンは、中国の輸出制限で供給難に陥った過去がある。経産省はニッケル、タングステンなど7種類の希少金属を対象とする備蓄制度を、83年に発足させた。しかし、現在の備蓄量は国内消費量の36・7日分で、目標の60日分に及ばない。対象に希土類などを加え、目標達成を急ぐべきだ。インジウムは、リサイクルが軌道に乗り、安定供給に威力を発揮している。他の金属の需要家も見習う必要がある。
     
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